今回のテーマは、服用薬剤調整支援料2について。
調剤報酬改定 2020で新設された加算ですが、こちらも非常に複雑な算定要件となっています。
今回は、服用薬剤調整支援料2の算定要件や算定するための注意事項、さらには具体的な事例までわかりやすく解説していきます。
点数は?
100点 1回あたり1000円の利益となります。
算定要件は?
複数の病院から6種類以上の内服薬(特に規定するものを除く。)が処方されている患者に対して、服用中の薬を一元的に把握した結果、重複投薬等が確認された場合、薬剤師が文書を用いて重複投薬等を解消するための提案を医師に行うことで3ヶ月に1回算定できます。※以下の告示を要約しています
複数の保険医療機関から6種類以上の内服薬(特に規定するものを除く。)が処方されていたものについて、患者又はその家族等の求めに応じ 、当該患者が服用中の薬剤について、一元的に把握した結果、重複投薬等が確認 された場合であって、処方医に対して、保険薬剤師が当該重複投薬等の解消に係る提案を文書を用いて行った場合に、3月に1回に限り所定点数を算定する。
特に規定するものとは何か?
内服薬の中で以下の2つが該当します。この2つを削除提案しても算定することができないため、注意が必要です。(この規定は服用薬剤調整支援料1と同じです)
① 頓服薬
② 服用を開始して4週間以内の薬
調剤している内服薬の種類数に屯服薬は含めない。また、当該内服薬の服用を開始して4週間以内の薬剤については、調整前の内服薬の種類数から除外する。
重複投薬等を解消するための提案とは何か?
厚生労働省が発行している通知文では、重複投薬や副作用の可能性等を踏まえ、処方される薬の数を減少させるための提案と記載されています。
しかし、重複投薬に関しては、疑義照会により薬を変更もしくは削除してもらうのが通例であるため、多くは副作用関連の理由で削除提案することが多くなると思われます。
「重複投薬等の解消に係る提案」とは、重複投薬の状況や副作用の可能性等を踏まえ、 患者に処方される薬剤の種類数の減少に係る提案をいう。
算定するための注意事項は?
服用薬剤調整支援料2を算定するためには、特に規定するものを除くこと以外にも注意事項がいくつかあるため、紹介していきます。
服用薬を一元的に把握すること
服用薬を一元的に把握することは、薬剤師の業務としては当たり前のことです。
ただポイントとして、把握すれば良いだけで管理する必要はありません。つまり、患者さんの服用薬全てを自分の薬局で調剤している必要はないわけです。
患者の服用薬について、手帳の確認、患者への聞き取り又は他の保険薬局若しくは保険医療機関への聞き取り等により、一元的に把握すること。なお、同種・同効薬が処方されている場合は、必要に応じて処方の背景を処方医又は患者若しくはその家族等に確認すること。
6種類以上の内服薬のうち少なくとも1種類は調剤している必要あり
全てを調剤している必要はないと言っても、服用している6種類以上の内服薬のうち1種類は、自分の薬局で調剤している必要があります。
6種類以上の内服薬について、少なくとも1種類は当該保険薬局で調剤されている必要がある。
文書を用いて医師へ提案する必要がある
電話連絡だけで済ませたいところですが、文書を用いて重複解消等の提案をする必要があります。
文書の様式は決められてる?
文書の様式に関して指定があります。
厚生労働省のHPに添付されている別紙様式3または、下記項目が記載されている様式を使用する必要があります。
① 受診している病院名と診療科
② 服用している薬の一覧
③ 重複投薬等に関する状況
④ 副作用の可能性がある患者の症状とその関連薬
⑤ その他(残薬、患者への聞き取り状況など)
報告書は以下の内容を含む別紙様式3又はこれに準ずるものをいう。
(イ) 受診中の医療機関、診療科等に関する情報
(ロ) 服用中の薬剤の一覧
(ハ) 重複投薬等に関する状況
(ニ) 副作用のおそれがある患者の症状及び関連する薬剤
(ホ) その他(残薬、その他患者への聞き取り状況等)
薬歴に文書(報告書)を添付すること
医師へ送付する文書(報告書)は、送付する前にコピーしておき、薬歴へ添付しておく必要があります。
「重複投薬等の解消に係る提案」とは、重複投薬の状況や副作用の可能性等を踏まえ、 患者に処方される薬剤の種類数の減少に係る提案をいう。この場合において、当該文書の写しを薬剤服用歴の記録に添付する等の方法により保存しておくこと。
服用薬剤調整支援料1と2の違いについて
似ているようで異なる服用薬剤調整支援料1と2。
算定要件の違いについて紹介していきます。※以下、「調整支援料」と省略。
文書(報告書)の様式指定の違い
調整支援料1は文書の様式指定がないのに対して、調整支援料2は指定された様式で文書(報告書)を作成し、医師へ送付する必要があります。
算定できるタイミングの違い
調整支援料1は、処方削除後、4週間以上継続した場合に初めて算定できるのに対して、調整支援料2は、医師へ重複投薬等を解消するための報告書を送付するだけで算定することができます。これはとても大きな違いです。
算定できる点数は25点の差(調整支援料1は125点)ではありますが、この算定できるタイミングの違いが調整支援料2の算定ハードルを格段に低くするでしょう。
算定できる頻度の違い
調整支援料1は月に1回算定できるのに対して、調整支援料2は3ヶ月に1回しか算定できません。重複投薬等が頻繁に発生するわけはないこと。さらには、調整支援料2は処方が削除されなくても算定できるため、毎月繰り返し同じ内容を報告するだけで算定できないようにルール化されているのだと思われます。
薬歴記載事項の違い
調整支援料1は必要事項を薬歴へ記載・添付する必要があるのに対して、調整支援料2は送付する文書(報告書)を薬歴へ添付するだけで問題ありません。
レセプト記載事項の違い
調整支援料1は必要事項をレセプト摘要欄へ記載する必要があるのに対して、調整支援料2は記載を明記されていません。
算定要件の違い・まとめ
前述した算定要件の違いをまとめてみました。
具体的な事例
前述したように薬が重複していた場合は、疑義照会にて処方を削除、もしくは変更してもらうことが通例のはずです。では一体、服用薬剤調整支援料2はどのようなケースで算定を考えたら良いのでしょうか?
具体的な事例を紹介していきます。
事例
胃薬を1年ほど継続して服用している。元々は逆流性食道炎により飲み始めたが最近は胃の調子も良い。今悩んでいるのは、便秘。2週間前から便秘薬をもらって飲んでいるが、効果を感じられないので今回から便秘薬を増量して様子をみることになった。
処方薬
・ガスターD(20) 1日2回朝食後・夕食後
・酸化マグネシウム(330) 1日3回毎食後
※前回は酸化マグネシウム(250)1日3回毎食後
報告書の提案内容
便秘症状に悩んでいるとのことです。処方薬を薬学的に確認させていただいたところ、胃酸分泌阻害薬であるガスターD(20)が酸化マグネシウムの効果を妨げている可能性があると考えます。現在は、逆流性食道炎の症状も治っているようですので、ガスターD(20)を一度休薬して様子をみてみるのはいかがでしょうか?
事例の考察
疑義照会するほどではないですが、是非医師に知ってもらい、処方を見直してもらいたいケースです。また、胃酸分泌阻害薬とマグネシウム剤の併用が良くない理由については、電話よりも文書の方が伝わりやすいと思われます。
胃酸分泌阻害薬と酸化マグネシウムの併用問題について確認したい方はこちら!
最後に
いかがでしたか?
今回の記事で服用薬剤調整支援料2の算定要件や1と2の違いについて理解していただけたかと思います。
手間のかかる加算ではありますが、服用薬剤調整支援料を算定していくことは、地域支援体制加算の算定要件にも含まれているため、今後算定を考えている薬局も多いことでしょう。
気になる方は、こちらの記事も合わせて確認して下さい!
今回の記事が少しでも算定の手助けになれば幸いです。
ではまた。