新型コロナウィルス(COVID-19)が猛威をふるい、日本中がパニック状態となっている今日このごろ。
今回は、新型コロナウィルスに対する有効な治療方法が少しずつわかってきたので、最新の治療薬情報をまとめていきたいと思います。
現在、新型コロナウィルスの治療薬として期待されている薬は4つ存在します。
1つずつ見ていきましょう。
❶ 喘息治療薬(シクレソニド)
どんな薬?
オルべスコという商品名で販売されている喘息治療のステロイド吸入薬です。
ステロイド吸入薬の中で唯一、抗ウィルス効果があることが最近になりわかってきました。
吸入ステロイド薬は、副作用がほとんどないことがメリットとして挙げられます。シクレソニドが注目されるきっかけとなったのがこちらの論文です。
高齢者が多く重症化率が高い中で、2月19 日に行われた「新型コロナウイルス感染症への対応に関する緊急拡大 対策会議」においてその有効性が紹介されたシクレソニド(商品名:オルベスコ)の吸入を、2月20日より酸素化不良・CT有所見の患者3名に使用開始し、良好な経過を得ているので報告する。
引用元:COVID-19 肺炎初期~中期にシクレソニド吸入を使用し改善した3例
http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_casereport_200302_02.pdf
デメリットは?
上記論文の有効症例数はわずか3例と非常に少ないため、本当に効果があるのかは不明です。
今後使用例が増えてくると思われるため、良い結果がでることを願っています。
❷ 抗ウィルス薬(レムデシビル)
どんな薬?
エボラ出血熱の治療薬として開発が進められてきた抗ウィルス薬です。
サルを用いた実験では抗ウィルス効果があることがわかっており、さらにはWHO(世界保健機関)の担当者が「現時点で本当に治療効果のある唯一の薬」と発言したことで、レムデシビルが一躍注目されることになりました。
デメリットは?
レムデシビルは国内未承認の薬です。
現在、新型コロナウィルス患者に対して臨床試験を実施中です。
結果がでるのは、2020年4月予定とのこと。
仮に良い結果がでても日本で承認されるのは、1年ほど先になる可能性もあるそうです。
【追記】2020/5/7
本日(2020/5/7)に特例承認の末、日本で正式に使用できるようになりました。
以下、簡単にではありますが、報告されている臨床試験データとなります。
・重症患者53人中36人(68%)で症状改善(ギリアドが発表)
・約1000人を対象に臨床試験をおこなった結果、レムデシビルを投与された患者は回復までの時間が早く(約31%)、死亡率も低かった(アメリカ国立アレルギー感染症研究所が発表)
しかし効果があるという反面、2割〜4割の患者で腎障害が報告されています。
また、レムデシビルは国内での臨床試験データは少なく、海外のデータが主になるため、使用には不安がつきまといます。
特例承認とは?
海外で承認されている薬に限り適応される制度で、通常よりも簡略化された手続きで承認され、日本でも使用可能となります。通常日本では、新薬が承認されるまで1年ほどの期間が必要となりますが、今回のレムデシビルは申請からわずか4日で承認される形となりました。
❸ 抗インフルエンザ薬(アビガン)
どんな薬?
日本の製薬会社である富士フィルムが開発した抗インフルエンザ薬です。
販売承認を得たのは、2014年と今から数年も前のことです。
しかしアビガンなんて薬、一般市民の方はもちろん、医師や薬剤師でも知らない方が多いはずです。
一体「アビガン」とは何者なのか?
実はアビガンはきたるべきインフルエンザ大流行に備え、国が流通管理(備蓄だけで使用は不可)している秘密兵器薬なのです。
漫画みたいな話しですが本当です。
そんなアビガンですが、新型コロナとインフルエンザは増殖過程で似ている部分があるため、アビガンにも治療効果が期待されています。
現在、アビガンも臨床試験中です。
もし本当に効果があると実証されれば、
日本が製造した薬が世界を救うことになります。
デメリットは?
妊娠中の方は服用できません。
妊婦が使用すると奇形児が産まれる可能性があることがわかっています。
❹ 抗HIV薬(カレトラ)
どんな薬?
アビガンと同じく、HIVと新型コロナの増殖過程で似ている部分があるためカレトラにも治療効果が期待されています。
こちらも臨床試験が進行中です。
デメリットは?
HIVに使用されるということもあり、副作用はとても多い薬です。
吐き気や下痢などの胃腸症状の他にも、高脂血症など脂質異常症を高確率で引き起こします。
カレトラの臨床結果について
「重度の新型コロナウィルス患者にカレトラを投与しても、標準治療(つまりは対症療法) を超える効果は得られなかった」と結論付けられました。
一方、「発症後12日以内にカレトラの服用を開始した患者では、改善するまでの日数が標準治療(対症療法)と比較して短く、死亡率も低下していた」と結果が出ています。
まとめると、期待していたような劇的な効果は得られなかったということです。
参照:A Trial of Lopinavir–Ritonavir in Adults Hospitalized with Severe Covid-19
❺ 急性膵炎治療薬(ナファモスタット)
どんな薬?
国内でも長年に渡り販売されている急性膵炎の治療薬です。類似構造をもつ薬でカモスタット(商品名:フオイパン)と言えば、薬剤師であれば誰でも知っている内服薬です。ナファモスタットは、カモスタットと異なり注射薬となります。
特徴としては、副作用が少ないことが挙げられます。
こちらも臨床試験が進行中です。
デメリットは?
デメリットは特にありません。
昔から販売されている薬ということもあり、安全性に関するデータは蓄積されています。あとは臨床試験で良い結果がでることを祈るのみです。
まとめ
武田製薬が新型コロナウィルスに対する新薬の製薬を急遽開始したという情報もあります。一刻も早くより有効な打開策が見つかることを願うばかりです。
新しい情報があれば追記します。
新型コロナウィルスに対してこちらの記事も読んでいただけると幸いです。
ではまた。