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PPIやH2ブロッカーなどの胃酸分泌抑制薬は酸化マグネシウムと併用できない!?

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今回は、薬の相互作用の話。

こんなことを聞いたことはありませんか?

PPIH2ブロッカーなどの胃酸を抑える薬は、酸化マグネシウムと相互作用があるので併用しない方がよい!

「もちろん知ってる」と言う方もいると思いますが、知らない薬剤師も多いはず。

なぜ知らない薬剤師も多いのか?

それは、添付文書に載っていないから!

しかし我々薬剤師は、薬の専門家。

「説明文書に載ってないから問題ないです!」なんて言うのは専門家としてあまりにも役不足

薬剤師は、常に薬学的に考えていく必要があるのです!

今回は、胃酸分泌抑制薬と酸化マグネシウムの相互作用について詳しく解説していきますよ!

胃酸分泌抑制薬と酸化マグネシウム併用でどうなる?

酸化マグネシウムと胃酸分泌抑制剤薬(PPIH2ブロッカー)を併用することにより、酸化マグネシウムの緩下作用(便秘改善作用)が減弱します!

つまり、酸化マグネシウムの効果が下がってしまうのです!

なぜ酸化マグネシウムの効果が下がってしまうの?

ずばり、酸化マグネシウムの作用機序に問題があります。

酸化マグネシウムは、どのような機序で効果を発揮するのか見ていきましょう!

機序①

まず、酸化マグネシウムは胃酸(塩酸)と反応することにより、塩化マグネシウムになります。

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機序②

次に、塩化マグネシウムは腸内で重炭酸と反応することで重炭酸マグネシウムが生成されます。

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機序③

この重炭酸マグネシウムが体内から腸内へ水分を誘導する(浸透圧効果)ことにより、便を柔らかくし、緩下効果(便秘改善効果)を発揮するのです。

 

つまり!

胃酸分泌抑制薬を投与すると、【機序①】の反応が起こらなくなるため、

酸化マグネシウムの効果が下がってしまうというわけです!

メーカー(製薬会社)に確認してみた!

胃酸分泌抑制薬と酸化マグネシウムの相互作用について、添付文書には記載されていませんが、メーカー(製薬会社)はどう考えているのでしょうか?

各メーカーに確認してみました。

PPIのメーカー(製薬会社)に確認

電話確認したところ、

「添付文書に記載されているように、今のところ酸化マグネシウムとの相互作用はないと思われます。そもそも酸化マグネシウムの作用機序がわからないので、酸化マグネシウムのメーカーに聞かれては?」とのこと。

う〜ん。どこのメーカーとは敢えて言わないけど本当に頼りにならない。。

酸化マグネシウムのメーカー(製薬会社)に確認

電話確認したところ、

「酸化マグネシウムの作用機序を考えると、理論上あり得ます。酸化マグネシウムの効果は下がるでしょう。しかし、相互作用試験を実施していないので、社内データはありません。」とのこと。

う〜ん。「どういうこと?」て感じです。

そもそもなぜ添付文書に載っていないの?

結構重要な事のはずなのに添付文書には記載されていない。

一体なぜなのか?

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ずばり、

添付文書にすべての相互作用が載っているわけではない!

実は、当たり前の事ほど添付文書には記載されていないことがあります。

すごくわかりやすい例で言うと、

β遮断薬とβ刺激薬の組み合わせは明らかに拮抗することが誰でもわかりますが、添付文書に禁忌や相互作用として記載されている薬は存在しません。(実はCOPD治療の際など、逆に併用が有効という文献もあったりしますが)

その他にも血圧降下薬と昇圧薬を併用すれば拮抗は明らかですが、添付文書には記載されていません。(これは当たり前過ぎるか)

つまり、添付文書に全てが載っているわけではない。

添付文書だけを頼りにしては駄目!ということ。

薬の専門家である薬剤師は、常に薬学的思考が求められるのです。

胃薬と酸化マグネシウムの相互作用データが記載されている文献はあるのか?

理論上、相互作用があるのは間違えないけど、やっぱりデータも確認したい。

相互作用データが記載されている文献はあるのでしょうか?

色々と探した結果、

文献を1つ見つけました!

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引用元)「Interaction of magnesium oxide with gastric acid secretion inhibitors in clinical pharmacotherapy」Eur J Clin Pharmacol(2014) 70:921-924

こちらは「酸化マグネシウムを単独服用した患者群」と「酸化マグネシウムと胃酸分泌抑制薬を併用した患者群」で、比較試験をおこなった文献です。

これによると、

「胃酸分泌抑制薬を併用している患者群」は、「酸化マグネシウムを単独服用している患者群」よりも、明らかに排便コントロールできている割合が低いことがわかります。(酸化マグネシウム単独群は72.2%の患者がコントロールできていたことに対して、胃薬併用群は36.4%しかコントロールできていない) 

解決策は?

相互作用があるのはわかりましたが、このようなケースに遭遇した場合、一体どのように解決していけば良いのでしょうか?

解決策① 本当に胃酸分泌抑制薬が必要なのか再検討する

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胃酸分泌抑制薬は漫然と投与されがちな薬です。今の患者さんの症状から本当に必要なのかを再検討する必要があるでしょう。

特にPPIの慢性的な長期投与は、腎臓に負担がかかることもわかっています。 

解決策② 便秘改善は薬以外の物で対処する

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そもそも便秘改善に薬を使用すること自体、賛成できることではありません。

センノシドなど刺激性下剤は、耐性もあるためもちろん却下ですが、塩類性下剤である酸化マグネシウムも耐性こそないものの、油断してると高マグネシウム血症という恐ろしい副作用があることを忘れてはいけません。 

可能なかぎり食事や運動により便秘改善を目指ことが重要でしょう。

ちなみに私の薬局では、

「もっちり麦を使うようになってから便秘が改善した!」という方が結構います。

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食物繊維は白米の22倍!

ちなみに私はもっちり麦の会社のまわしものではありません(笑)

最後に

過去に患者さんから、

「今まで調子良かったのに最近、急に便秘になった気がする」

「最近、通じの薬が効かなくなってきたような」

なんて言われたことありませんでしたか?

実は、今回解説した胃酸分泌抑制薬と酸化マグネシウムの相互作用が関係していた可能性もあります!

今後、このケースに遭遇した場合は薬学的に対処していきましょう!

ではまた。