今回のテーマは、吸入薬。
吸入薬の中でもエリプタ製剤にスポットをあてていきたいと思います。
エリプタ製剤はグラクソ・スミスクライン社が開発した吸入器製剤で、
・テリルジー
・レルベア
・アニュイティ
・アノーロ
・エンクラッセ
の5剤が現在発売されています。
今回は、5つのエリプタ製剤の違いを徹底解説していきます。
規格の違い
テリルジー、レルベア、アニュイティは100μ・200μの2つの規格があるのに対して、アノーロとエンクラッセは1規格しか存在しません。
用量規格に幅があることは、症状によって用量調節が可能となるため、利点と言えるでしょう。
また、吸入回数の規格はテリルジー、レルベア、アノーロ、エンクラッセは7 or 14という吸入回数の少ない規格が存在する一方、アニュイティは30という吸入回数の多い規格のみ存在します。
吸入薬を使用後、薬が合わなかったり、症状が改善されないケースも考慮すると吸入回数が多い規格しか存在しないことはデメリットと言えるでしょう。
有効成分の違い
エリプタ製剤に限らず、全ての吸入薬は「ステロイド」・「抗コリン薬」・「β刺激薬」の3つ有効成分のどれか(もしくは全て)を組み合わせて製薬されています。
エリプタ製剤5剤の違いはこちら。
テリルジーは、ステロイド・抗コリン薬・β刺激薬の3成分が配合されている万能製剤である一方、レルベアとアノーロは2成分配合。アニュイティとエンクラッセは1成分が配合されている薬となります。
もう少し分かり易くしたのがこちら。
配合されている用量としては、ステロイドは100μ or 200μ、抗コリン薬は62.5μ、β刺激薬は25μと、どのエリプタ製剤も統一されているため、比較しやすいです。
つまりこの時点で、テリルジーが5剤の中で一番効果が強い薬(特に200μ)であることは間違いないと言えます。
・エリプタ製剤の中で一番効果が強い薬はテリルジー(特に200μ)
適応の違い
吸入薬で意外と重要視されるのが、 適応の違いです。
エリプタ製剤に限らず、全ての吸入薬の適応疾患は2つしか存在しません。
1つは気管支喘息。もう1つはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)です。
気管支喘息とCOPDは似ているようで全く異なる疾患なので、どちらの適応があるのかは重要なことと言えます。適応が異なる吸入薬を使用すればレセプトの返戻となってしまうこともあるでしょう。
気管支喘息とCOPDの違いについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
5剤の適応の違いはこちら。
テリルジー、レルベアの2剤は気管支喘息とCOPD両方の適応(2剤とも200μは気管支喘息のみの適応であるため注意)があるのに対し、アニュイティは気管支喘息のみ。アノーロとエンクラッセの2剤はCOPDのみの適応があります。
・テリルジーとレルベアの100μは気管支喘息とCOPD両方の適応がある
用法の違い
エリプタ製剤の最大の特徴は、吸入のしやすさです。
カチッとフタを開けただけで薬がセットされ、そのまま吸入できます。
さらに使用回数は、5剤とも共通して1日1回となります。
・エリプタ製剤の用法は全て1日1回
値段の違い
製剤により吸入回数が異なるため、1製剤あたりの薬価で単純に比較しても意味がありません。薬価を吸入回数で割ることで「1吸入あたりの薬価」を算出して比較すると以下になります。
5剤で比較すると、テリルジーが一番高く、アニュイティが一番安い薬となります。
(テリルジー200μは発売されることは決定しているが、薬価収載は今のところ未定。とはいえ、他剤の値段から予想するに恐らく300円台の前半が予想されます)
副作用の違い
有効成分が多く含まれている薬ほど、副作用には注意が必要です。
テリルジー、レルベア、アニュイティの3剤は口腔・咽頭カンジダの副作用を避けるためにも吸入後のうがいは必須となります。
テリルジー、レルベア、アノーロの3剤はβ刺激薬が含まれており、頻脈や不整脈の副作用が起こる可能性があるため、心臓疾患を患っている患者には注意が必要となります。
まとめ
今までの項目をまとめてみました。
エリプタ製剤は、「適応」・「症状の具合」・「患者の既往歴」の3つを考慮して選択される薬と言えるでしょう。
ではまた。