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薬剤師がわかりやすく解説!気管支喘息とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の違いとは?

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今回のテーマは、気管支喘息とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)について。

似ているようで異なるこの2つの疾患。

違いを理解するためにインターネットを検索すれば、多くのサイトで違いを確認できますが、正直どれも複雑でわかりにくい。

そこで今回は、気管支喘息とCOPDの違いについて現役薬剤師がわかりやすく解説していきます。

好発年齢の違い

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気管支喘息の好発年齢

気管支喘息は小児〜成人全ての年齢で発症する可能性があります。

COPDの好発年齢

COPDは中年以降(特に40歳以上)で多く発症する疾患です。

POINT!

・喘息の好発年齢は全ての年齢。対するCOPDは中年以降。

発症原因の違い

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気管支喘息の発症原因

気管支喘息の発症原因は様々です。

ダニやハウスダスト、花粉などのアレルギー性の原因。さらには、大気汚染や薬剤、ウイルス感染、アルコール、天候などの非アレルギー性の原因が挙げられます。

ちなみにアレルギー性は小児非アレルギー性は成人以降の発症原因になることが多いのも気管支喘息の特徴です。

COPDの発症原因

COPDの要因の多くは喫煙です。

実に喫煙は、COPDの9割以上の原因と言われています。 

つまり「喫煙歴」は、気管支喘息とCOPDを鑑別する時の大きなポイントになると言えるでしょう。

POINT!

・喘息の発症要因は様々。対するCOPDは喫煙。

発症機序の違い

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気管支喘息の発症機序

気管支喘息は、様々な要因で気管支に炎症が起こります。炎症が起こることで気管支が狭くなり呼吸器不全を引き起こします。

COPDの発症機序

COPDは、2つの機序が存在します。

① 細気管支炎

タバコの有害物質が肺に入ることで、細い気管支(細気管支)に炎症が起こります。炎症が起こることで細気管支がさらに狭くなり呼吸器不全を引き起こします。これを細気管支炎と言います。

② 肺気腫

タバコの有害物質が細気管支のさらに先にある肺胞にまで届くことで、肺胞が破壊されます。肺胞が破壊されることで呼吸器不全を引き起こします。これを肺気腫と言います。

症状の違い

喘息とCOPDの症状は非常に似ています。

どちらの疾患も呼吸困難(息切れ)喘鳴痰のからみなどの症状があり、症状だけで鑑別することは非常に難しいと言えるでしょう。しかし、違いが全くないわけではありません。

各疾患の特徴的な症状は以下となります!

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気管支喘息の特徴的な症状

気管支喘息の特徴的な症状として「発作性」であるということです。原因は様々ですが、何かが引き金となって発作的に症状が発生することが多い疾患です。

COPDの特徴的な症状

COPDの特徴的な症状は2つあります。

① 少しずつ悪くなる

COPD患者の多くは、階段や坂道を登る時の息苦しさを感じることで違和感に気づき初めます。その後症状が進行するにつれ、歩行時でも症状がでるようになる等、何も治療を行わないと日を追うごとに症状が進行していきます。

② 労作時に症状がでる

2つめの特徴的な症状は、「労作時(体を動かした時)」に症状がでると言うことです。逆に言うと安静にしていれば、症状がでないこともCOPDの特徴となります。(重症になれば別) 

注意!

気管支喘息も「労作」が引き金になって発作が起こることあります。ポイントは、COPDは基本「安静時には症状がでない」と言うことです。

治療方法の違い(薬以外)

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気管支喘息の治療方法

喘息の原因は様々ですが、原因を特定し除去することができれば一気に改善につながることでしょう。ただ、特定するのが難しいのが実情でもあります。

COPDの治療方法

大原則として、禁煙です。逆に喫煙しているかぎりは、治療どころか症状はどんどん進行していくことになります。

治療方法の違い(薬) 

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気管支喘息、COPDの治療薬としては、「ステロイド薬」「β刺激薬」「抗コリン薬」の3種類があり、症状の進行度合いから使い分けされます。

しかし、各疾患で治療の中心となる薬は異なります。

中心となる薬の違いはこちら!

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気管支喘息の治療薬

気管支喘息の中心となる治療薬は、ステロイド薬となります。 発症機序の項目でも記載したように、気管支喘息は気管支の炎症が絶対的に起こっているため、ステロイド薬を使用して炎症を抑えます。

COPDの治療薬

COPDの中心となる治療薬は、抗コリン薬となります。

なぜCOPDには抗コリン薬が有効? 

理由① 気管支収縮はコリン作動性であるため

COPDは副交感神経の緊張が病的に高まることで症状がでると言われているため、抗コリン薬が有効とされています。

理由② 加齢とともにβ2受容体は減少するため

年齢が上がるとともにβ2受容体は減少していく傾向にあるため、中年以降に発症することの多いCOPDにはβ刺激薬が比較的効きにくいということになります。

理由③ 健常者に比べβ2受容体が減少しているため

COPD患者は健常者に比べβ2受容体が減少していると言われています。この理由からもCOPDにはβ刺激薬が比較的効きにくいということになります。

POINT!

・喘息に有効な治療薬はステロイド。対するCOPDは抗コリン薬。

まとめ

今までの項目をまとめてみました。

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似ているようですが、これだけの違いがあるのです。
日々の業務に少しでも参考になったら幸いです。

このような比較記事も書いているので、興味のある方は是非!

ではまた。