2019年12月、β3受容体作動薬であるベオーバ錠の長期処方がついに解禁となりました。このベオーバ、過活動膀胱治療において今や多くの泌尿器科医から第一選択薬として推奨されている注目薬剤なのです。
ベオーバを解説する上ではずせないのが、同じくβ3受容体作動薬であるベタニスとの違いです。
今回は、ベオーバとベタニスの違いについて徹底解説していきます。
作用機序の違い
作用機序はどちらも同じです。
β3受容体を刺激することで、膀胱を覆っている排尿筋が弛緩し、膀胱の容量を大きくします。
結果、排尿回数が少なくなるわけです。
では2剤で何が異なるのでしょうか？
ずばり、2剤の違いとして、β3受容体への選択性が異なります。
ベタニスはβ1:β2:β3の選択性が1:1:446（文献1参照）であることに対して、ベオーバは、β1:β2:β3の選択性が1:1:9000（インタビューフォーム参照）というデータがあります。
つまり、ベオーバはベタニスと比較してβ3受容体への選択性が高い薬と言えるのではないでしょうか？（直接比較ではないため、はっきりとは言いきれない）
用法の違い
用法はどちらも1日1回で同じです。
規格の違い
ベタニスは25mgと50mgの2つの規格が存在するのに対して、ベオーバは50mgの1規格のみ存在します。
また、ベタニス25mgは、肝・腎機能が低下している患者に処方する規格であり、通常は50mgを使用します。一方、ベオーバは肝・腎機能が低下している患者にも同じ規格を投与できます。
薬価の違い
ベオーバは新しい薬ですが比較的安価な薬です。先程も記載したようにベタニス25mgは、肝・腎機能が低下している患者に投与するための規格であり、通常は50mgが処方されます。
つまり、ベオーバとベタニスで薬価の差はほとんどないと言えるでしょう。
効果の違い
ベオーバはベタニスよりも、選択的にβ3受容体を刺激するため、単純に考えればベオーバの方が効果が強そうです。（しかしそう単純でないのが薬）
両剤を直接比較したデータは今のところ存在しませんが、添付文書の臨床試験データを見るかぎり、2剤の効果はほぼ同等（データだけ見ればベオーバの方が少し良い？）というところでしょうか。
あくまでも添付文書のデータ比較であることを考慮して下さい。直接比較のデータが見つかれば追記します。
一包化・粉砕の可否
ベタニス、ベオーバともに一包化に関しては問題ないと言えるでしょう。
添付文書の試験データを確認すると、2剤ともに無包装状態でも長期保存が可能と記載されています。（ベタニスは少し気になることも記載されていますが）
粉砕に関しては、2剤で違いがあります。
まず、ベタニスは徐放性製剤であるため、粉砕はもちろん半錠にすることも不可であるとベタニスの添付文書に明記されています。
本剤は徐放性製剤であるため、割ったり、砕いたり、すりつぶしたりしないで、そのままかまずに服用するよう指導すること。割ったり、砕いたり、すりつぶしたりして服用すると、本剤の徐放性が失われ、薬物動態が変わるおそれがある。
引用元：添付文書 ベタニス錠
対するベオーバは、粉砕に関するデータがありません。
錠剤・カプセル剤粉砕ハンドブック(第8版)も確認しましたが、まだ記載されていませんでした。
個人的見解では、ベオーバは、徐放性製剤ではなく即放性製剤であるため、理論上は粉砕が可能と考えます（あくまでも個人的見解）。しかし原薬は、光に不安定であることがわかっており（そのためフィルムコーティングされている）、可能な限り直前の粉砕、遮光袋に入れてのお渡し・保管が求められるでしょう。
相互作用薬の違い
ベタニスはCYP3A4で代謝され、CYP2D6を阻害します。そのため、ベタニスは併用注意薬が非常に多く、併用禁忌薬も存在します。
対して、ベオーバの代謝にはCYPが関わることなく、主にグルクロン酸抱合で代謝されます。そのため、ベオーバは併用注意薬が少なく、併用禁忌薬も存在しません。
副作用の違い
ベタニスの副作用として有名なのは、血圧上昇と脈拍数増加です。そのため、心疾患や高血圧を治療中の患者は、服用する際に注意が必要となります。
対するベオーバは、注意すべき副作用がほとんどありません。
ベタニスは、β3受容体の選択性がベオーバと比べ低いことから、β2受容体も刺激してしまうため、心臓へ負担がかかりやすいことが推測されます。
ベオーバは、ベタニスと比較して副作用が少ないと言えるでしょう。
禁忌の違い
ベタニスの禁忌は「重篤な心疾患を有する患者」、「妊婦・授乳婦」、「重度の肝機能障害患者」などがあり、ベタニスの禁忌は比較的多いと言えるでしょう。
対して、ベオーバの禁忌は「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」のみであり、事実上ベオーバの禁忌は存在しません。
まとめ
今回の記事でベオーバは、ベタニスよりも多くの面で優れている薬だとわかっていただけたかと思います。現段階では、ベオーバを使わずして、ベタニスを使用するメリットはほとんどないとも言えるでしょう。
1つ懸念点を挙げるとすれば、ベオーバはベタニスよりも販売の歴史がまだ浅いということです。
さらに長期的に使用した際、どのような報告があるか注目する必要があります。
ではまた。
