経腸栄養剤であるラコールは、液体と半固形の2種類のタイプが存在します。
・ラコールNF配合経腸用液
・ラコールNF配合経腸用半固形剤
今回は、ラコールの液体タイプと半固形タイプの違いや使い分けについて解説していきます。
カロリー・成分の違い
カロリーと成分の違いはありません。
・液体タイプ、半固形タイプでカロリーと成分は全く同じ
水分含量の違い
液体タイプの方が水分含量は高いです。
この水分含量が高いか低いでラコールは使い分けが1つ可能です。
水分含量の違いによる使い分けは?
水分含量が高い液体タイプ
脱水症状を懸念している患者には使いやすいです。
水分含量が低い半固形タイプ
水分量を制限されている患者(CKDなど)には使いやすいです。
水分含量にそこまで大きな違いがあるわけではないですが、液体タイプから半固形タイプに処方変更する際は、脱水症状が起きないよう注意する必要があります。
・液体タイプは、脱水症状を懸念している患者には使いやすい
・半固形タイプは、水分制限している患者には使いやすい
粘度の違い
半固形タイプの方が圧倒的に粘度は高いです。
そのため、半固形タイプの方が経管チューブに詰まりやすいというデメリットがあります。また、半固形タイプは自然落下で投与することができず、加圧バッグやカテーテルチップシリンジなどの医療器具が必ず必要となるため、比較的手間はかかりやすいと言えるでしょう。
・半固形タイプは粘度が高く、比較的経管チューブに詰まりやすい
・半固形タイプの使用には医療器具が必要となるため手間がかかる
投与方法の違い
液体タイプは経口、経管のどちらでも投与できるのに対し、半固形タイプは経管のみでしか投与することができません。
普通に考えれば、経管投与の患者は、液体タイプの方が使いやすいと考える方が多いでしょう。
しかし、半固形タイプには、経管投与する上での大きなメリットが存在します!
半固形タイプを経管投与するメリットとは?
半固形タイプは、短時間で投与することができます。
これが半固形タイプを使用する最大のメリットとも言えるでしょう。
なぜ半固形タイプは短時間で投与できる?
半固形タイプは、胃を拡張させることで、胃の中に貯留する能力や時間を増加させます。そのため、半固形タイプは胃の中に貯めておくことができ、短時間で投与することができるのです。
逆に液体タイプは胃を拡張させることができないため、胃の中に貯留する能力や時間が低下してしまいます。そのため、液体タイプは胃の中に貯めておくことができず、時間をかけて投与する必要があるわけです。
・半固形タイプ最大のメリットは短時間で投与できること(経管の場合)
副作用の違い
半固形タイプは、通常の食事に近いかたちで消化されるため、胃の消化機能を保つことができ、胃へ滞留する時間も長くなります。
そのため、半固形タイプは下痢や吐き気、さらには誤嚥性肺炎にもなりにくいと推測されます。
しかし、あくまでもメカニズムから推測したもので、副作用頻度の違いを証明している論文はありません。(添付文書データも副作用頻度はほぼ同じ)
・半固形タイプは比較的副作用が少ないと推測される
胃瘻漏れの違い
半固形タイプの方が胃瘻漏れが少ないと言われています。
つまりは、半固形タイプを使用する方が、胃瘻患者で問題になりやすいスキン(肌)トラブルが少ないということです。
なぜ半固形タイプは胃瘻漏れが少ない?
理由は主に2つあります。
① 半固形タイプの使用で胃が拡張し、貯留する能力も増加するため
② 半固形の方が物理的に液体よりも漏れにくいため
・半固形タイプは胃瘻漏れが少なく、スキントラブルも少ない
フレーバーの種類の違い
液体タイプは好みのフレーバーを選ぶことができるため、患者側にとってはメリットとなるでしょう。逆に薬局側にとってはフレーバーの種類が多いことは在庫を抱えることになるため、デメリットにもなります。
また、あくまでもフレーバーの違いであり、味はどれも甘く調整されており、そこまで違いはありません。(個人的見解。コーンは少しだけ塩見あり。)
・液体タイプはフレーバーが多いため患者側にはメリットあり
・液体タイプはフレーバーが多いため、薬局側にはデメリットにもなる
薬価の違い
液体タイプの方が比較的安いです。
使用される方の多くは1割負担だと思われるため、実際にはそこまで大きな差ではありませんが、毎日の積み重ねとなれば少しでも安い方が良いはずです。
・液体タイプは比較的安いため患者メリットとなる
液体タイプと半固形タイプの違い・まとめ
今までの項目をまとめてみました。
ラコール液体タイプはこんな時に使う!
・脱水症状を懸念している
・経口で服用する
・色々なフレーバーの中から選びたい
・少しでも薬の値段を抑えたい
ラコール半固形タイプはこんな時に使う!
・水分制限している
・経管で服用する(短時間で投与できるため)
・胃瘻漏れや副作用を考慮したい(もちろんないに越したことはないが)
以上ラコール液体タイプと半固形タイプの違いと使い分けでした。
ではまた。