今回のテーマはオンライン服薬指導について。
調剤報酬2020から新設された項目です。
今回は、オンライン服薬指導の算定条件からメリット・デメリット、さらには利用できる便利アプリまで徹底解説していきたいと思います。
- オンライン服薬指導とは?
- オンライン服薬指導を行い算定できる点数とは?
- オンライン服薬指導を算定するための条件とは?
- 離島・へき地にオンライン服薬指導を行う場合は例外あり
- オンライン服薬指導のメリットは?
- オンライン服薬指導のデメリットは?
- オンライン服薬指導に利用できる便利アプリとは?
- 最後に
オンライン服薬指導とは?
スマートフォンやパソコンなどの情報通信機器を利用することで、患者宅に直接訪問しなくても服薬指導を行うことができます。
2018年頃から試験的に運用されてきており、調剤報酬改定2020からオンライン服薬指導を行った際に算定できる専用の点数が新設されました。
つまり、2020年から本格的に運用が開始されることになります。
オンライン服薬指導を行い算定できる点数とは?
オンライン服薬指導を行い、算定できる点数は以下の2つがあります。
また、以下2つの点数は併算定が不可です。
① 薬剤服用歴管理指導料4(43点/患者1人につき月1回まで)
オンライン服薬指導を行った時の薬歴管理料です。
② 在宅患者オンライン服薬指導料(57点/患者1人につき月1回まで)
オンライン服薬指導を行った時の服薬指導料です。
オンライン服薬指導を算定するための条件とは?
オンライン服薬指導を行い、前述した2つの点数を算定するためには様々な条件が存在しますので、紹介していきます。
医師がオンライン診療を行う必要あり
いくら薬局の業務が忙しいからといって、薬剤師側だけがオンラインで業務を行うことは出来ません。医師がオンライン診療を行った上で処方箋が発行された時のみオンライン服薬指導が可能となります。
初回は対面での指導が必要
初回からいきなりオンライン服薬指導を行うことはできません。
<薬剤服用歴管理指導料4>
3ヶ月以内に対面の服薬指導が行われた時のみ算定可能。
薬剤服用歴管理指導料「4」は、医科点数表の区分番号A003に掲げるオンライン診療料に規定する情報通信機器を用いた診療により処方箋が交付された患者であって、3月以内に対面により薬剤服用歴管理指導料「1」又は「2」が算定されているものに対して、オンライン服薬指導を行った場合に、月に1回に限り算定する。
<在宅患者オンライン服薬指導>
事前に在宅患者訪問薬剤管理指導(医療保険)が行われた時のみ算定可能。
在宅患者オンライン服薬指導料は、在宅時医学総合管理料に規定する訪問診療の実施により処方箋が交付された患者であって、在宅患者訪問薬剤管理指導料が月1回算定されているものに対して、オンライン服薬指導(訪問薬剤管理指導と同日に行う場合を除く。)を行った場合に、月1回に限り算定する。
重要ポイント
上記引用にもあるように、同日に在宅患者訪問薬剤管理指導(医療保険)と在宅患者オンライン服薬指導を併算定することはできません。
また、在宅患者オンライン服薬指導は、居宅療養管理指導(介護保険)を算定している患者は対象外となるので注意が必要です。
つまりは、介護保険を利用している患者は在宅患者オンライン服薬指導の対象外ということです。(介護保険を利用していると居宅療養管理指導が優先され、在宅患者訪問薬剤管理指導は算定できないため)
介護保険を利用している患者にオンライン服薬指導を行う場合は、薬剤服用歴管理指導4だけを算定することになります。
服薬指導計画を作る必要あり
在宅指導を行えば必ず計画書(薬学的管理指導計画書)を作る必要があるように、オンライン服薬指導を行う際も計画書を作成する必要があります。
なお、計画書を作成する際は、オンライン服薬指導に加え、通常の対面による服薬指導も組み合わせて計画するよう厚生労働省の通知文に明記されています。
対面による服薬指導とオンライン服薬指導を組み合わせた服薬指導計画を作成し、 当該計画に基づきオンライン服薬指導を実施すること。
オンライン服薬指導を行う薬剤師は事前に決めておくこと
オンライン服薬指導を行う薬剤師は、原則1人と決められています。
原則ということで、例外があります。
下記3つの条件を満たしていれば、追加で2人(計3人)の薬剤師がオンライン服薬指導を行うことができます。
追加2人の薬剤師がオンライン服薬指導を行うための条件
① 該当患者に対して、事前に通常の服薬指導を行ったことがあること
② 服薬指導計画に薬剤師の名前が記載してあること
③ 追加の2人がオンライン服薬指導を行うことについて、同意を得ていること
ただでさえ、画面越しでコミュニケーションをとるため、毎回違う薬剤師が対応していたら不安になってしまうと思われます。
やはり通常は、担当薬剤師を1人決めておくと良いでしょう。
オンライン服薬指導を行う保険薬剤師は、原則として同一の者であること。
ただし、 次のア及びイをいずれも満たしている場合に限り、やむを得ない事由により同一の 保険薬剤師が対応できないときに当該薬局に勤務する他の保険薬剤師がオンライン服薬指導を行っても差し支えない。
ア 当該薬局に勤務する他の保険薬剤師(あらかじめ対面による服薬指導を実施したことがある2名までの保険薬剤師に限る。)の氏名を服薬指導計画に記載していること。
イ 当該他の保険薬剤師がオンライン服薬指導を行うことについてあらかじめ患者の同意を得ていること。
事前に申請が必要
薬剤服用歴管理指導料4、在宅患者オンライン服薬指導を算定するためには、ともに施設基準の届出が必要となります。
上記引用書類は、薬剤服用歴管理指導料4の届出書類ですが、在宅患者オンライン服薬指導料の届出も同時に兼ねていると厚生労働省の通知文に明記されています。
在宅患者オンライン服薬指導料に関する施設基準
薬剤服用歴管理指導料の4に規定するオンライン服薬指導に係る届出を行っていること。
離島・へき地にオンライン服薬指導を行う場合は例外あり
前項で多くの算定条件を紹介していきましたが、離島やへき地に対してオンライン服薬指導を行う場合は条件緩和事項が2点あります。(薬学的管理指導料4の場合)
条件緩和事項とは?(薬学的管理指導料4の場合)
① 事前の対面服薬指導は不要
② 服薬指導計画は不要
注)在宅患者オンライン服薬指導を算定する場合は必要となります。また、事前に決めておいた専任の薬剤師以外の2人がオンライン服薬指導を行う場合も必要となり、緩和事項はありません。
離島やへき地とは?
離島やへき地の基準に関して、具体的に明記されている資料はありません。
厚生労働省関係国家戦略特別区域法施行規則の第31条には、「利用者が住む地域における薬剤師の数及び薬局の数が少なく、薬局と利用者の居住する場所との間の距離が相当程度長い場合又は通常の公共交通機関の利用が困難な場合」とざっくり記載されています。※記載文は要約済
オンライン服薬指導のメリットは?
患者宅までの移動時間を短縮できる(在宅管理の場合)
通常の在宅指導を行う上で、最大のデメリットは移動時間です。
本来であれば移動に使っている時間を他の業務にあてることができるため、業務の効率化につながるでしょう。
忙しく受診する時間がない方
オンラインシステムを活用できるのは、なにも高齢者だけではありません。子育てや仕事で忙しく病院や薬局に来れないという方にも有用です。
離島やへき地など近くに医療機関ない方
離島やへき地に住んでいる方など、病院や薬局が近くにない方には有用です。 在宅管理の場合は、交通費や移動時間をお互いに削減することができるでしょう。
コロナウィルスなど感染症が流行している時
新型コロナウィルスなど大規模感染症が流行している時は、病院や薬局の待合室にいるだけで危険があります。このような非常時にもオンラインシステムは有効活用できるでしょう。
2020年4月5日現在、コロナウィルス感染防止対策による緊急的な時限措置ではありますが、初診の患者でもオンライン診療・投薬が可能となっています。
オンライン服薬指導のデメリットは?
薬の配送料がかかる
厚生労働省の通知文では、薬の配送料は患者負担にしてよいと明記されていますが、現実的には配送料までの請求は難しく、薬局側が負担するケースも多いと思われます。仮に患者側が負担するとしても、患者側のデメリットと言えるでしょう。
当該服薬指導を行う際の情報通信機器の運用に要する費用及び医薬品等を患者に配送する際に要する費用は、療養の給付と直接関係ないサービス等の費用として、社会通念上妥当な額の実費を別途徴収できる。
情報通信機器の設備投資が必要
オンライン服薬指導には、スマートフォンやタブレット、パソコンやテレビ電話などの情報通信機器に加え、次項で紹介するシステムアプリの運用コストもかかってきます。オンラインシステムを利用することで採算が合うのかが、今後大きな課題となってくるでしょう。
高齢者が機器類を扱えるか不安
IT化が進み、今や多くの高齢者がパソコンやスマートフォンを所有しています。とはいえ、まだまだ高齢者が機器類をしっかり扱えるのかは不安があります。
患者の生活の様子が見えづらい(在宅管理の場合)
家の中の様子を直接見せてもらうことで気づけることも多いはずです。(残薬、部屋の整理整頓具合、バリアフリーなど)
画面越しのやり取りでは、見せたくないところはわざわざ見せてくれないと思いますので、やはり定期的な直接訪問は必要となってくるでしょう。
オンライン服薬指導に利用できる便利アプリとは?
オンライン服薬指導に利用できる便利アプリを2つ紹介していきます。
どちらのアプリも試験段階から運用されてきていたアプリで、患者側は診察と投薬を1つのアプリで完結することができます。
① YaDoc
福岡県にある「きらり薬局」が登録事業者となり、福岡県の国家戦略特区に対して、全国で初めて試験運用されたオンライン服薬指導のシステムアプリです。
② CLINICS
日本調剤やアイン薬局が登録事業者となり、千葉県の国家戦略特区に対して、試験運用されたシステムアプリです。
最後に
2020年の改定からオンライン服薬指導も本格的にスタートしたとはいえ、まだまだ課題や未知な部分も多いのが現実です。
とはいえ、昨今の急激なIT化を考えれば将来的にはさらに注目が集まってくるのは間違えありません。
今のうちから、将来的なフローを考えておくのも良いのではないでしょうか?
ではまた。