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三大薬害事件の1つ「サリドマイド事件」から学ぶ教訓とは?【薬剤師がわかりやすく解説するよ】

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薬剤師向けに始めたこのブログですが、

ありがたいことに多くの一般の方にも読まれているようなので、

今回は一般の方向けに薬害について話していきたいと思います。

薬害とは何なのか?

副作用とは少し異なります。

薬害を具体的に言うと、

「薬の有害性に対する情報を軽視した結果、引き起こされる人災的な健康被害

のこと。

その薬害を語るうえで絶対にはずせないのがこの薬物。

サリドマイド

医療関係の方であれば誰でも一度は聞いたことがあるでしょうが、一般の方にはあまり知られていないこの薬物。

サリドマイドは今から50年以上も前のことではありますが、

日本三大薬害事件の1つと言われる

サリドマイド事件」を引き起こした原因薬物なのです。

知らない方には、是非知ってほしい。

知っていた方には、もう一度思い出してほしい。

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今回は、サリドマイドの薬害から薬がどれだけ恐ろしいものなのか?

そしてサリドマイド事件から学ぶ教訓とは何か?

について解説していきたいと思います。

サリドマイドとは?

1958年、大日本製薬(現在の大日本住友製薬)が発売した

・イソミン(睡眠薬

・プロバンM(胃薬)

という2つの薬の主要成分がサリドマイドです。※現在はどちらも販売中止。

サリドマイドの副作用とは?

サリドマイドには、催奇形性があります。

催奇形性とは?

妊娠中に薬を服用することで胎児に奇形が起こる危険性のことです。奇形は胎児の手、足、耳、内臓などに発生し、場合によっては死産します。

つまり、妊婦は絶対に飲めない薬だと言うこと!

この副作用が日本三大薬害事件の1つ、

サリドマイド事件を引き起こすのです。

サリドマイド事件とは?

一般的に「妊婦が薬を服用するのは駄目」なのは当たり前のことです。

「副作用をよく確認せずに飲んだ?」

などと思っている方も多いでしょう。

違います!

サリドマイド事件と言うぐらいの騒ぎになった理由は、ずばり

副作用(催奇形性)は発売後に発覚したこと。

それどころか恐ろしいことに、

「妊婦も安心して飲める薬ですよ!」

などと妊婦に薦められ、日本全国の薬屋で販売されていたのです。

※特に胃薬は「つわり」を改善するためにも販売されていた

その結果、日本だけで309人の胎児に奇形被害がでたと言われています。

また、309人は生存確認された数で、死産も含めると1000人ほどの胎児に被害がでていた可能性がある推測されています。

国と製薬会社の闇

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サリドマイドの恐ろしさはわかってもらえたかと思いますが、

本当に恐ろしいのはここからです。

サリドマイドは日本だけでなく、先立ってドイツの製薬会社でも製品化され販売されていました。※ドイツでは「コンテルガン」という睡眠薬として販売。

発売から数年後、ドイツでも多くの奇形児が誕生したことからサリドマイドの副作用であることがいち早く発覚します。

ドイツで販売中止となったのは、1961年11月のこと

しかし、日本でサリドマイドが販売中止となったのは、1962年9月なのです。

つまり!

約1年間はリスクが明らかになっていたにも関わらず日本で販売され続けていたのです。

しかも変わらず「妊婦も飲める薬です!」などと言われて。。

その1年間で200人以上の胎児に被害がでたと言われています。

国と製薬会社は、サリドマイドドイツ国内では販売中止になっているという事実を知らなかったわけではありません。

副作用をすぐに認めなかったのです。

そこに「プライド」や「利益」という、くだらない理由が絡んでいたのは言うまでもありません。

サリドマイド事件その後

被害にあった方は当然、国と製薬会社を訴えるでしょう。

しかし、国を相手にする裁判、国賠請求は中々大変なものです。

裁判の判決が下されたのは、1974年。

事件が起きてからなんと10年後のことです。

(国と製薬会社が因果関係と責任を認め賠償金などを払うことで和解が成立)

なぜサリドマイドは発売されてしまったのか?

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そもそもなぜサリドマイドのような危険な薬が販売されてしまったのでしょうか?

これに関しては詳しいことはわかりませんが、

販売前にしっかり検査(治験)されていなかったということでしょう。

「ドイツではすでに販売されている薬だから問題ない!」とでも考えていたかもしれません。

実はサリドマイドは、アメリカでも発売される予定でしたが、治験段階で「催奇形性があるかもしれない」ということが発覚し、発売を見送り安全性の検査を続けていたようです。

日本よりアメリカの方が安全性に関してルーズに感じている方も多いでしょうが、意外とそうでもないようです。

サリドマイド事件から学ぶ教訓とは?

サリドマイド事件から50年以上経過した今、

過去の教訓から学ぶことはできているのでしょうか?

答えは「NO」です。

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「NO」と思わざる得ない出来事が最近また起こったのです。

2018年、塩野義製薬からインフルエンザの新薬「ゾフルーザ」という薬が発売されました。

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ゾフルーザの使い方は、たった1回服用するだけ!1回服用で、治療終了。

「画期的な薬が発売された!」と一躍ニュースとなり、2018-2019のインフルエンザシーズンには500万人以上の患者に投与されたと言われています。

しかしゾフルーザの処方が多く出回ってから数ヶ月後、

「ゾフルーザは耐性ができるかもしれない」

という情報がまわってきたのです。

そしてここからが恐ろしいこと。

実はゾフルーザは、発売前から「もしかしたら耐性ができるかもしれない」ということがわかっていたようなのです!(治験に関わった医師は指摘していた)

しかし、またまた利益のためなのか発売を急いだばかりにこの有様です。

また、ほとんどの医療関係者はこの事実を知りませんでした。

それどころか製薬会社は、

「画期的な良い薬が発売した」と過剰なぐらいアピールしてくるのです。

サリドマイドの教訓が活かされていない良い例だと思います。

サリドマイド事件から学ぶ教訓とは?

・製薬会社は新薬を発売する際、入念な臨床試験をすること

・医師は新薬の過剰使用は控えること

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と言っても一般市民側からすればどうすることも出来ないのが現実です。

むしろ薬剤師である私も何も出来ない。

ではどうすれば良いのか?

情報を伝えること!

今の世の中はネット社会です。

情報を発信し、一人でも多くの方にまずはこの事実を知っていてほしい。

ではまた。