今回のテーマは、モビコール配合内用剤について。最近少しずつ処方量が増えてきているこの便秘薬。
モビコール使用のメリットやデメリット、さらにはおすすめの飲み方についても徹底解説していきます!
モビコールとはどんな薬?
日本で一番流通している便秘薬である酸化マグネシウムと同じ「浸透圧性下剤」に分類される薬です。(酸化マグネシウムとモビコールは、同じ浸透圧性下剤に分類されますが、作用機序は異なります)
日本では2018年に発売された比較的新しい薬ですが、アメリカでは古くから使用されている薬であり、便秘薬シェアの50%を占めているそうです。
浸透圧性下剤の作用機序や酸化マグネシウムとモビコールの違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
服用方法は1包を水に溶かす
服用方法は1包にはいっている粉薬を水(60mL)で溶かして服用します。
粉を溶かさずにそのまま服用すると、効果がしっかり発揮されないため注意が必要です。
なぜ溶かす必要がある?
モビコールの有効成分であるマクロゴール4000は、水分保持効果(浸透圧による)を持ちます。
保持された水は大腸まで運ばれ、排便を促進します。
この水分保持効果を得るために水(60mL)で溶かす必要があるわけです。
ちなみに溶かすために使用した60mLの水は、小腸などで吸収されずに大腸まで届き、便になってでてくると言われています。
溶解しないで服用することは、承認外の用法になり、有効性・安全性を検討していないため避けてください。
主成分のマクロゴール4000が、“保持した水”を大腸に届けることで排便を促進します。引用元:モビコール配合内用剤Q&A
モビコールのメリットは?
メリットを4点挙げます。
メリット① 耐性や依存性がない
モビコールのメリットというよりも、浸透圧性下剤に共通しているメリットと言えます。継続して服用しても薬が効きにくくなったり、薬がないと排便できないというような依存性はないと言われています。
メリット② 高齢者も使用しやすい
同じ浸透圧性下剤である酸化マグネシウムは、高マグネシウム血症のリスクがあるため腎機能が低下しがちな高齢者に使用する際は注意が必要となります。
その点モビコールは、高齢者に起こりやすい副作用がないため、高齢者にも使用しやすい便秘薬と言えるでしょう。
メリット③ 小児でも使用しやすい
モビコールは小児に対する用量が明確に定められています。
他の便秘薬が使用できないわけではありませんが、小児用量は明記されていないため、その都度用量を計算する必要があります。
そのためモビコールは、小児にも使用しやすい便秘薬と言えるでしょう。
モビコールのデメリットは?
デメリットを3点挙げさせてもらいます。
デメリット① 値段が高い
モビコールは、日本では比較的新しい薬となるため値段は高い薬となります。
同じ浸透圧性下剤の酸化マグネシウムと比較するとその差は歴然です。
デメリット② 用法が複雑
モビコールの用法は、とにかく複雑です。
慣れるまでは処方する医師も監査する薬剤師も一苦労な薬です。特に増量の際は、注意が必要となるでしょう。
デメリット③ 効果発現が遅い
モビコールは、酸化マグネシウムやセンノシドのように1回飲んですぐに効果(カマやセンノシドは、一般的に服用後7〜8時間で効果発現)がでるような薬ではありません。
モビコールは、継続的に服用することでゆっくり効果が発現(約2日)する薬です。
Q.成人における、服用してからの効果発現時間(服用後の「初回自発排便」までの日数)は?
A.成人国内第Ⅲ相試験(検証期):初回自発排便発現までの日数の中央値は2.0日(n=80)でした。
引用元:モビコール配合内用剤Q&A
そのためモビコールは、屯用で使用しないようメーカーからも注意喚起されています。
頓用(頓服)は、承認外の用法なので避けてください。
モビコール®は、継続投与することで比較的ゆっくり作用が現れる薬剤であり、さらに継続投与により便中の水分を適正な水分量に保ち続けることが、重要だと考えます。引用元:モビコール配合内用剤Q&A
デメリット④ 水で溶かす手間あり
冒頭でも記載したように、服用する前には必ず薬を水で溶かす必要があります。
また、水で溶かす際にはいくつか制約もあるため注意が必要です。
① 60mL以上の水で溶かす!
作用機序の都合上、少ない水で溶かすのは当然よくありません。
外出先で服用する際など、水の分量がわからなくなってしまった時は、気持ち多めの水で溶解するのがベターと言えるでしょう。
また、多めの水で溶解しても効果が増強する可能性はないとメーカーHPに記載されています。(推察ではあるが。。)
マクロゴール4000に“保持された水”は、小腸で吸収されずに大腸内の水分量を増加させますが、規定量より多い溶解水で溶解した場合、規定量を超えた溶解水はマクロゴール4000が保持することができず、小腸で吸収されるため、便秘に対する有効性・安全性には影響しないと推察されます。
引用元:モビコール配合内用剤Q&A
② 分割服用する際は溶かしてから!
1包は効きすぎるので半分飲みたいという方もいるでしょう。
しかしモビコールを分割服用する際は、注意が必要となります。
【理由】
モビコールには主要有効成分のマクロゴール4000以外に3つの粉末が配合(便中の浸透圧を適正レベルに保持するために配合)されているのですが、粉末はそれぞれ粒子径が異なるため、分割すると均一に効果を発揮できない可能性があるのです。
モビコール配合内用剤は、1包中に、①マクロゴール4000(6.5625g)、②塩化ナトリウム(0.1754g)、③炭酸水素ナトリウム(0.0893g)、④塩化カリウム(0.0251g)の粉末を均一に配合していますが、粒子径が異なるため、輸送中の振動によって均一配合とならないことが予想されます。したがって、分包品であるモビコール®配合内用剤の0.5包の分割処方は避けてください。引用元:モビコール配合内用剤Q&A
【分割服用するためには?】
どうしても分割服用したい場合には、水に溶解後、液状にしてから服用する必要があります。また、溶解後の安定性試験では1週間ほど液体の状態で安定というデータもありますが、細菌繁殖の観点から、冷蔵庫に保管し当日中に飲みきることをメーカーから推奨されています。
1包を62.5mLの水に溶解した液の7日間の安定性試験では、いずれも安定でした。ただし、物理・化学的な安定性データであり、細菌繁殖等の検討をしていません。
したがって、溶解後すぐに服用できなかった場合は、容器にラップなどの覆いをして冷蔵庫に保管していただき、『その日のうちに飲み切る』ようにしてください。
引用元:モビコール配合内用剤Q&A
③ お湯で溶かすのは駄目!
お湯の方がよく溶けるだろうと考える方もいるでしょうが、モビコールをお湯で溶かすことはNGとなります。
理由は2つあります。
【理由①】特異な臭いがする可能性あり
主要成分であるマクロゴール4000をお湯で溶解すると、特異な臭いを発する可能性があります。(後に実際に検証)
【理由②】効果が減弱する可能性あり
補助成分である炭酸水素ナトリウムは、65℃以上で分解されてしまう性質があるため、お湯で溶解すると効果が減弱してしまう可能性があります。
添付文書の調製方法には、「水に溶解する」と記載しており、お湯での溶解は、お勧めはしていません。
その理由は、お湯で溶解した場合、主成分のマクロゴール4000の特異な匂いがする可能性があること、さらに、成分の一つである炭酸水素ナトリウムが、65℃以上の溶液中で速やかに分解するためです。
引用元:モビコール配合内用剤Q&A
モビコールおすすめの飲み方は?
モビコールの味は?(水で溶解)
薄い塩水という印象です。無臭ですが、正直飲みやすい味ではありません。
水以外で溶解しても良い!
大人は我慢して飲むことができるでしょうが、子供は嫌がるような塩味です。
そんな時を考慮してかモビコールは水以外の液体で溶解することも可能となっています。
上の表は、メーカーが発行しているモビコールの飲み合わせ表(モビコール配合内用剤 飲み合わせ表)を参照して作成しています。
こちらによるとリンゴジュースやスポーツドリンクでモビコールを溶解すると塩味が消えて飲みやすくなるそうですが、実際に私もいくつか試してみました!
リンゴジュースで溶かしてみた
美味しいとは言えないものの、塩味をかなり打ち消してくれていて飲みやすいイメージでした。これなら星5個も納得です。
スポーツドリンクで溶かしてみた
リンゴジュースより塩味は残ります。水で溶かすよりはましなものの、個人的にはあまりおすすめできないかも。。もしスポーツドリンクで溶かす場合は、濃いめのスポーツドリンクで溶かすことをおすすめします。
お湯で溶かしてみた
薄っすらと薬品のような独特な臭い(これが特異な臭いというやつ!?)がしました。しかし、余程過敏な人でないと感じることができない程、薄っすらとした臭いです。
味はもちろん変わらず塩味ですが、正直温かい方が飲みやすいと感じました。
味噌汁で溶かしてみた
普通のお味噌汁となんら変わりありません!モビコール自体が塩味なので、塩っ気のある液体とはすごく相性が良いと感じます。
また、お湯で溶かした時のような薬品のような臭いも味噌の臭いが打ち消してくれていました。
ただ65℃以下に冷ましてから溶かすのだけは忘れずに!
おすすめの飲み方・まとめ
・塩気のある物
・温かい物(65℃以下)
・濃い味の物
個人的にはこの3点がモビコールを飲みやすくするためのポイントと感じます。
以上。モビコールのメリット・デメリット、そしておすすめの飲み方でした。
ではまた。