今回は、服薬情報等提供料について。
地域支援体制加算を算定するため(調剤基本料1以外の薬局)には、とても多くの件数が求められているこの加算。
今回は、服薬情報等提供料の算定要件や1と2の違い、さらには具体的な事例から算定のコツまで徹底解説していきます。
算定要件は?
服薬情報等提供料には、1と2の2種類が存在します。
下記は、厚生労働省が通知している告示文をわかりやすく要約しています。
服薬情報等提供料1
病院からの求めがあり、患者の同意を得た場合に算定できる。
詳しくは、薬の使用が適切に行われるよう、患者の服薬情報等について把握し、病院に必要な情報を文書により提供した場合に月1回に限り算定できる。
服薬情報等提供料2
患者もしくはその家族からの求め or 薬剤師が必要性を認めた時に、患者の同意を得た場合に算定できる。
詳しくは、薬の使用が適切に行われるよう、患者の服薬情報等について把握し、患者やその家族、または病院などへ必要な情報を提供した場合に算定できる。
なお、病院へ情報提供する場合は文書により情報提供する必要があり、月1回に限り算定できる。
1 1については、保険医療機関の求めがあった場合において、患者の同意を得た上で、薬剤の使用が適切に行われるよう、調剤後も当該患者の服用薬の情報等について把握し、保険医療機関に必要な情報を文書により提供等した場合に月1回に限り算定する。これらの内容等については薬剤服用歴に記録すること。
2 2については、患者若しくはその家族等の求めがあった場合又は保険薬剤師がその必要性を認めた場合において、当該患者の同意を得た上で、薬剤の使用が適切に行われるよう、調剤後も患者の服用薬の情報等について把握し、患者、その家族等又は保険医療機関へ必要な情報提供、指導等を行った場合に算定する。なお、保険医療機関への情報提供については、服薬状況等を示す情報を文書により提供した場合に月1回に限り算定する。これらの内容等については薬剤服用歴に記録すること。
服薬情報等提供料1と2の違い
服薬情報等提供料の1と2は、似ているようで大きく異なります。
両者の違いを詳しく見ていきましょう。
算定できる点数が異なる
服薬情報等提供料1:30点(300円の利益)
服薬情報等提供料2:20点(200円の利益)
服薬情報等提供料1の方が10点(100円)多く加算することができます。
しかし、正直どちらもわずかな点数であり、情報提供する労力の割に合っていないと個人的には考えます。
服薬情報等提供料は、算定して儲けるというよりは、地域支援体制加算の算定を目指している薬局が積極的に算定していく加算であると言えるのではないでしょうか?故に服薬情報等提供料の内容をあまり把握していない薬剤師は、世の中に結構いると感じます。
情報提供の必要性を判断する者が異なる
1は医師が判断する一方、2は患者やその家族さらには薬剤師自らが情報提供の必要性を判断することができます。ちなみに2の等というのは、現時点でケアマネージャーが該当することがわかっています。その他、等が何に該当するか記載されている資料は存在しませんが、個人的には病院の薬剤部も含まれるのではないかと考えています。
Q156 服薬情報等提供料2は、「患者もしくはその家族等」の求めに応じて,薬剤師が必要な情報提供や指導を行った場合に算定できますが,この「等」とはケアマネージャーも該当するのでしょうか。
A 該当します。
引用元:令和2年版 保険調剤Q&A
情報提供先が異なる
1は病院へのみ情報提供する一方、2は病院、さらには患者やその家族、ケアマネージャーへ情報提供した場合でも算定できます。
この中で見逃しがちなのが、患者やその家族に情報提供した場合にも情報提供料2は算定できるという点です。患者やその家族に情報提供するのは当たり前と考えてしまうためスルーしてしまいがちですが、実は算定が可能となります。
患者やその家族への情報提供とは?
投薬後から次回来局時までの間に、薬の副作用情報(緊急安全性情報など)を患者へ情報提供したり、コンプライアンス(しっかり服用できているか?)を確認し、患者の家族へ必要な情報を提供すること等が含まれます。※詳しくは具体的な事例の項目で紹介しています。
在宅医療の契約を行っている患者に対して行う場合、ケアマネへ情報提供しても算定は認められません。つまり、現実的にケアマネへ情報提供して服薬情報等提供料を算定するケースはほとんどないと思われます。下記の引用文には、在宅患者訪問薬剤管理指導料と記載されていますが、居宅療養管理指導料を算定している患者も当然算定できないと考えられます。
服薬情報等提供料は、かかりつけ薬剤師指導料、かかりつけ薬剤師包括管理料又は在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者については算定できない。
月に算定できる回数が異なる
1は月に1回しか算定できないのに対して、2は算定制限がありません。(※2であっても病院へ情報提供する場合は月に1回のみ)
問51 服薬情報等提供料について、患者、その家族等へ必要な情報提供、指導等を行った場合は月1回の算定制限がないと考えてよいか。
答 貴見のとおり。
これはとても大きなポイントです。
外来服薬支援料や吸入薬指導加算は、月の算定回数が1回以下であるため、勘違いしてしまいがちなのですが、服薬情報等提供料2は月の算定回数の上限は存在しないのです。
ちなみに、病院へ情報提供する場合は1、2ともに月1回しか算定できませんが、複数の病院へ情報提供する場合は、それぞれの病院に対して月1回ずつ情報提供料を算定できます。(中々そんなケースはないと思いますが。。)
保険医療機関への情報提供については、患者1人につき同一月に2回以上服薬情報等の 提供を行った場合においても、月1回のみの算定とする。ただし、複数の保険医療機関又 は診療科に対して服薬情報等の提供を行った場合は、当該保険医療機関又は診療科ごとに月1回に限り算定できる。
文書の必要有無が異なる
1は情報提供するために文書が必須であるのに対して、2は文書を必要としません。また、2は文書を必要としないどころか、電話で情報提供した場合でも算定が可能となります。(病院へ情報提供する場合は文書が必要)
正直、文書を作成するのはとても手間がかかることなので、2の要件緩和はとても助かります。
患者又はその家族等の求めに応じて実施した情報提供については,患者や家族からの電話により服薬指導を行った場合であっても算定可能か。
A 算定できる。ただし,本情報提供料の算定について患者の同意が得られている場合であって,かつ次回受付時に再度,服薬状況や患者の体調変化などを確認した場合に限る。
引用元:令和2年度 保険調剤Q&A
服薬情報等提供料1と2で同じこと
患者の同意を得ること
どんなに情報提供が必要な場面でも患者の同意を得ないことには、算定できません。ここが算定するための大きなハードルの1つとなっているでしょう。
多くの薬剤師が同意を得るということに大きな障害を感じていると思います。
しかし、この問題は考え方を1つ変えるだけで解消することができます。(詳しくは算定のコツで解説)
内容は薬歴にも記載すること
情報提供した内容は、必ず薬歴にも記載する必要があります。というより記載しておかないと、次に患者さんが来局した時、薬剤師間で情報を共有できないので、しっかり記載しておく方が業務が円滑に進むと言えるでしょう。
かかりつけ薬剤師や在宅契約をしている患者は算定できない
前述したようにかかりつけ薬剤師を算定する患者に対しては、1と2両算定ともに併算定することはできません。
しかし!
かかりつけ薬剤師を契約している患者の場合、併用して算定(両方の点数をとる)できないだけで、情報提供した実績は残ります。つまりは、地域支援体制加算の算定に必要な情報提供回数に含まれるということです。
「服薬情報等提供料が併算定不可となっているもので、相当する業務」とは次のものをいう。
・薬剤服用歴管理指導料及びかかりつけ薬剤師指導料の特定薬剤管理指導加算2
・薬剤服用歴管理指導料の吸入薬指導加算
・薬剤服用歴管理指導料の調剤後薬剤管理指導加算
・服用薬剤調整支援料2
・かかりつけ薬剤師指導料を算定している患者に対し、吸入薬指導加算、調剤後薬剤管理指導加算及び服薬情報等提供料の算定に相当する業務を実施した場合(薬剤服用歴の記録に詳細を記載するなどして、当該業務を実施したことが遡及して確認できるものでなければならないこと。)
・かかりつけ薬剤師包括管理料を算定している患者に対し、特定薬剤管理指導加算2、吸入薬指導加算、調剤後薬剤管理指導加算、服用薬剤調整支援料2又は服薬情報等提供料の算定に相当する業務を実施した場合(薬剤服用歴の記録に詳細を記載するなどして、当該業務を実施したことが遡及して確認できるものでなければならないこと。)
算定するタイミングについて
服薬情報等提供料を算定するタイミングは、ずばり次回患者さんが来局した日となります。
Q154 服薬情報等提供料は,保険医療機関に患者の服薬状況などの情報を提供しただけでなく,患者または家族の求めに応じ,患者などに必要な情報提供および服薬指導を行った場合にも算定できますが,患者などへの情報提供・服薬指導に係る算定はどの時点で行うのでしょうか。
A 次回の処方箋受付時に算定します。
引用元:令和2年版 保険調剤Q&A
服薬情報等提供料1の算定タイミングについて明確に記載されている資料はありませんが、1は文書での情報提供が必須となるため、2と同じく次回患者さんが来局した日の算定で問題ないと言えるでしょう。
また、算定する際に1つポイントとなるのが、情報提供先の処方箋の有無は算定に関係ないということです。
Q155 服薬情報等提供料2のうち,患者や家族からの求めに応じて情報提供した場合,次回の処方箋受付時に算定することになっていますが,この「次回」とは,同一保険医療機関で交付された処方箋の受付時という意味でしょうか。それとも,別の保険医療機関で交付された処方箋の受付時も含まれるのでしょうか。
A 必ずしも同一保険医療機関から交付された処方箋の受付時のみ指しているわけではありません。
引用元:令和2年版 保険調剤Q&A
具体的な事例
算定するための要件はだいたい理解したけど、実際にどんな時に算定すればいいの?と思われる方もいるでしょう。
ここでは、私が経験してきた具体的な事例をいくつか紹介していきます。
残薬数を情報提供
残薬があれば通常は、重複防止加算を算定する事が多いと思われますが、患者さんが急いでいて、疑義紹介をしている時間がないという時ありませんか?
そんな時「次回までに残薬数を医師に連絡しておきましょうか?」と提案・同意をとることで、服薬情報等提供料2を算定することができます。
患者の悩みを情報提供
ロキソニン錠とセルベックスカプセルを服用している方で「急を要するわけではないけどカプセルは飲みにくいから他の薬はない?」と相談を受けたことがありました。
そんな時「次回までにカプセルから錠剤タイプの胃薬に変更してもらうよう医師に伝えておきましょうか?」と提案・同意をとることで、服薬情報等提供料2を算定することができます。
医師への情報提供内容としては以下のような感じです。
【医師への情報提供内容】
セルベックスのようなカプセル剤は服用しにくいと悩まれているようです。
【薬剤師の提案】
提案① セルベックスカプセルからムコスタ錠への変更
提案② ロキソニンをセレコックスへ変更し、セルベックスカプセルを削除
保険医療機関に対する情報提供の内容は次のとおりとする。
ア 当該患者の服用薬及び服薬状況
イ 当該患者に対する服薬指導の要点、患者の状態等
ウ 当該患者が容易に又は継続的に服用できるための技術工夫等の調剤情報
服薬状況を患者の家族に報告
在宅契約を行わずに患者宅へ訪問し薬を整理したケースがありました。薬を整理したら、患者の家族へ状況を連絡してほしいとの希望があった(家族の希望)ため、状況を連絡し、服薬情報提供料2を算定しました。ちなみにこの場合、外来服薬支援料も算定しています。
外来服薬支援料についてはこちらの記事で詳しく解説しています!
新たな副作用情報等を情報提供
製薬会社から新たな副作用や相互作用、もしくは薬の自主回収連絡などが届くことはよくあると思います。
その情報を患者さんに伝えることで服薬情報等提供料2を算定することができます。ただこの場合、患者の同意を得るという観点から考えると難しい状況であると言えます。
服薬情報等提供料2は、以下の場合に算定できる。
ア 患者又はその家族等の求めがあった場合、患者の同意を得て、次に掲げる情報等の内容について、患者又はその家族等に対して速やかに提供等し、当該情報に関する患者の状態等の確認及び必要な指導を次回以降の来局時に行った場合。
- (イ)緊急安全性情報、安全性速報や医薬品・医療機器等安全性情報など、処方箋受付時に提供した薬剤情報以外の情報で患者の服薬期間中に新たに知り得た情報
- (ロ)患者の服薬期間中に服薬状況の確認及び必要な指導
何でも情報提供すれば算定できるというものではありません。ポイントとしては、薬学的な判断を伴うことが求められます。
処方箋の記入上の疑義等では算定できないとあるが,具体的にはどのようなものか。
A 薬学的な判断を伴わない,以下のようなものがあげられる。
① 単なる処方箋上の記入漏れ,記入ミス,判読不能。
② 軟膏をど子に塗るか。
③ 点眼をどちらの目にさすか。など
引用元:令和2年版 保険調剤Q&A
算定のコツ
ここからは独自の見解とはなりますが、服薬情報等提供料を多く算定するためのコツをいくつか紹介していきます。あくまでも独自の見解ということを考慮して下さい。
医師に協力してもらう
服薬情報等提供料1を算定する場合に利用できる方法です。
そもそもですが、服薬情報等提供料の事を知っている医師は世の中にほとんどいないでしょう。そのため、まずは医師に服薬情報等提供料について説明し、理解してもらうことです。そして医師から積極的に情報提供の指示をもらうことができれば患者さんの同意を得ることはそれほど難しくないはずです。
服薬情報等提供料2についてよく理解する
情報提供料2は、内容をよく理解すれば意外と算定できるチャンスが多く存在します。特に注目したいのは以下2点の項目です。
・患者や家族に情報提供した場合も算定可能
・病院以外へ情報提供した場合回数制限なし
この2点は見落としがちな項目です。
かかりつけや生保などお金が発生しない患者は算定しやすい
かかりつけ薬剤師の契約をしている患者さんや生活保護の患者さんは、情報提供料を算定してもお金が発生させずに件数だけ積み重ねることができます。
しかし、そんな狙い撃ちだけをしているようであれば、地域支援体制加算に必要な算定ノルマは絶対に達成できないと断言させていただきます。
患者の同意を得る方法について
「同意を得る」ということに対して薬剤師が気にしていることは、一体何なのか?
ずばり、お金の問題でしょう。
情報提供することで僅かながら料金が発生してしまう。
一体そんな承諾をしてくれる患者さんがどれだけいるのか?
そんなところだと思います。
そんな考えは、改める必要があります!
これは私なりの見解となりますが、あくまでも情報提供してよいかの同意をとればよいだけで、料金が発生することを敢えて言う必要はないわけです。
この見解は賛否あるでしょう。
しかし、重複防止加算を算定する際、疑義紹介すれば料金が発生することをわざわざ患者さんに伝えている薬剤師がどれだけいるでしょうか?
算定してもしなくてもよいハイリスク加算をDo処方でもベタどりしてませんか?
情報提供してよいかの同意はしっかりとる。そして患者さんのために必要な情報を提供する。自信を持って算定したらいいじゃないですか!(もちろん患者さんからお金のことに対して聞かれれば正直に答えればよいと思います)
一番重要なのは「その情報提供が患者さんのためになるのか?」ということだと私は考えます。
最後に
最後に、服薬情報等提供料1と2の違いをまとめておきます。
地域支援体制加算を算定することは容易ではありません。(基本料1以外の場合)
しかし、目指さないことには何も始まりません!
地域支援体制加算の算定なんて無理!という薬剤師ほど算定の内容についてほとんど理解していないと私は感じます。
それぞれの算定内容をしっかり理解して、ノルマ達成を目指しましょう。
地域体制加算の関連する記事はこちら!
もし記載に間違えなどあれば、コメントして下さると幸いです。
ではまた。