今回のテーマは、新薬であるデエビゴ錠について。
2020年7月。ベルソムラ錠に次ぐ、2剤目のオレキシン受容体拮抗薬である、デエビゴ錠が発売されました。
ベルソムラと何が違うのでしょうか?
今回は、ベルソムラとデエビゴの違いについて徹底解説していきます。
作用機序の違い
ベルソムラとデエビゴは、オレキシン受容体を選択的に阻害することで、睡眠作用を発揮します。
2剤の違いは、オレキシン受容体の選択性(阻害力)が異なります。
オレキシン受容体は、
・オレキシン1受容体(OX1R)
・オレキシン2受容体(OX2R)
の2種類あることがわかっているのですが、
デエビゴは、オレキシン2受容体の選択性(阻害力)がベルソムラよりも強い薬となります。(2剤ともOX1R、OX2R両方とも阻害はする)
デエビゴのインタビューフォームには、オレキシン受容体に対する結合性の比較試験が載っています。
こちらの結果を確認すると、デエビゴはベルソムラと比較してオレキシン2受容体に対する結合性(阻害力)が強いことがわかります。※IC50とは50%阻害濃度のことで、濃度が低いほど少量で薬の効果を発揮できるということを意味します。
OX1RとOX2Rの違いは?
オレキシン1受容体とオレキシン2受容体の違いは完全には解明されていませんが、オレキシン2受容体の方がレム睡眠の抑制により深く関わっていることはわかっています。
つまり、オレキシン2受容体をより選択的に阻害するデエビゴは、ベルソムラよりもレム睡眠を誘発させるため、理論上はデエビゴの方が効果が強いはずです。
しかし、両剤の効果の違いを比較したデータは今のところ存在しません。
今後、論文などで新しいデータがでましたら追記します。
・デエビゴは、ベルソムラよりもオレキシン2受容体を選択的に阻害するため、デエビゴの方が効果は強い可能性。(あくまでも理論上)
副作用の違い
上記の結果をみると、デエビゴの方が有害事象が発生する確率は高いようですが、薬物乱用経験者を対象とした試験であること、さらに症例数も少ないことから、はっきりとしたことは言えません。
規格・薬価の違い
デエビゴは新薬ですが、ベルソムラと値段の差はほとんどありません。
それどころか、最小用量では、デエビゴの方が値段が安くなります。
また、規格は両剤とも3つの規格が存在しますが、ベルソムラとデエビゴで規格の使用対象者が異なるので注意が必要です。
最小の規格は、ベルソムラ、デエビゴともに「CYP3A4を阻害する薬と併用する時」に使用されますが、「通常用量」はベルソムラでは最大、デエビゴでは中間が該当します。
ベルソムラからデエビゴへ処方変更される際は注意が必要となるでしょう。
・ベルソムラとデエビゴは両剤とも3つの規格が存在するが、規格の使用対象者はそれぞれ異なるので注意が必要。
一包化の可否の違い
ベルソムラは一包化が不可であることに対し、デエビゴは一包化が可能となります。
根拠として、インタビューフォームに記載されている無包装状態での安定性データを比較すると、ベルソムラはわずか1日で外観のひび割れが発生するのに対して、デエビゴは12ヶ月無包装状態で保管しても問題がないという驚異的なデータがでています。
・ベルソムラは一包化が不可だが、デエビゴは一包化が可能。
併用禁忌の違い
ベルソムラは、禁忌薬がとても多いことで知られています。中でもクラリスロマイシンは、処方量が多い薬なので、ベルソムラが処方された時は細心の注意が必要でした。
その点、デエビゴには禁忌薬は存在しないため、ベルソムラと比較して使いやすくなったと言えるでしょう。
しかし、禁忌薬がないだけでデエビゴにも併用注意薬は存在しますので、全く気にしないで使用できるわけではありません。
つまりデエビゴは、ベルソムラと比較してCYPの影響を受けにくい薬とも言えるでしょう。
・ベルソムラは禁忌薬が多いが、デエビゴには禁忌薬が存在しない。
まとめ
今までの項目をまとめてみました。
ベルソムラとデエビゴを比較すると、現時点では多くの点でデエビゴの方が優れている薬と言えるでしょう。
しかしデエビゴは発売したばかりであるため、今後新たな欠点が見つかる可能性もあります。また、デエビゴは2020年7月から1年間は、14日制限ですので注意が必要です。
ではまた。