今回のテーマは、ミドリン点眼について。
ミドリン点眼には、ミドリンM点眼とミドリンP点眼の2種類が存在します。
そこで今回は、ミドリンM点眼とミドリンP点眼の違いについて徹底解説していきます。
有効成分の違い
ミドリンMの有効成分は、副交換神経遮断効果のあるトロピカミドのみ。
ミドリンPの有効成分は、トロピカミドに加えて、交換神経刺激効果のあるフェニレフリンが配合されています。さらに、若干ではありますが、ミドリンPの方がトロピカミドが多く含まれています。
つまり、ミドリンMとミドリンPの違いを一言で言うなら、ミドリンPの方が効果が強いと言えるでしょう。
実際にミドリンPの添付文書には、フェニレフリンが配合されている方が散瞳効果が強いと明記されています。※調節麻痺効果については不明
一般に高齢者では瞳孔径が小さい傾向にあり、トロピカミド単独の点眼では十分な散瞳が得られないことがあるが、フェニレフリン塩酸塩を配合した本剤では年齢に関係なく散瞳が得られ、特に40歳以上では散瞳効果の増強が著明であった。
引用元:ミドリンP点眼液 添付文書
ちなみにミドリンPの「P」は、phenylephrine(フェニレフリン)の「P」、ミドリンMの「M」は、myopia(近視)の「M」だそうです。
・散瞳効果はミドリンPの方が強い。
適応の違い
適応の違いを添付文書で確認すると、またはと及びという文言の違いがありますが、メーカーに確認したところ、特にこの違いに意味はないそうです。
また、添付文書では確認ができませんが、
ミドリンM➡︎仮性近視
ミドリンP➡︎眼底検査、手術前
と使い分けられることが多いそうです。
つまり、
ミドリンM➡︎調節麻痺効果
ミドリンP➡︎散瞳効果
を主に利用して使い分けるということです。
調節麻痺効果とは?
人の目にはレンズの役割をしている水晶体があります。通常この水晶体は、近くの物を見る時は分厚くなり、遠くの物を見る時は薄くなるよう調節されます。この調節機能がうまく働かない時に一時的に機能を麻痺させる効果を調節麻痺効果と言いいます。
ミドリンを使用した後、ピントが合わずにぼんやりするのは、調節麻痺効果のためです。
※水晶体が一時的に分厚いままの状態になることを仮性近視と言う。仮性近視をそのままにしておくと、本当に近視になることがある。
散瞳効果とは?
通常人の瞳孔(瞳)は、明るい所では閉じ、暗い所では開くように機能します。
散瞳効果とは、薬により強制的に瞳孔を開き、光が入りやすい状態にすることを言います。散瞳した状態では、光を直接見ないよう注意が必要です。
・ミドリンMは仮性近視、ミドリンPは眼底検査、手術前に使用される。
ミドリンPの処方意図は?
「適応の違い」の項目でも記載したように、ミドリンPは眼底検査や手術前に使用されることが多い薬であるため、処方せんに記載されてくることはほとんどなく、病院内で使用される薬となります。
しかし、1つだけ例外があります。
ミドリンPは、ブドウ膜炎や白内障の術後に起こる炎症が原因となる癒着(虹彩と水晶体が癒着)を防止する効果があるのです。
ミドリンPが処方されたからといって、患者の状態も確認せずに「ミドリンMの間違えではないですか?」などと疑義照会すると、とても恥ずかしい思いをしてしまうため、注意しましょう。
・ミドリンPは癒着防止効果あり。
効果時間の違いについて
以下は、添付文書(ミドリンM:赤字、ミドリンP:青字、ミドレフリンP:緑字)を参照して作成した資料となります。※ミドレフリンPはミドリンPの後発品
全く同じとは言えないものの、全体的に見れば、ミドリンMとミドリンPの効果時間は、ほぼ同等であると言えるでしょう。※メーカーにも、同等という解釈でOKと確認済
ちなみに、ミドリンPの方がミドリンMよりも最大散瞳到達時間が長いのは、ミドリンPの方が散瞳効果が強いことから散瞳幅が大きくなるため、最大到達時間が長くなっていると推測できます。
・ミドリンMとPの効果時間は、同等。
ミドリンPの欠点
散瞳効果も強く、効果時間も同等なら「ミドリンMは不要でミドリンPだけでよいのでは?」と考える方もいるでしょう。
しかし、ミドリンPにも欠点が存在します。
フェニレフリン配合により使用注意の患者あり
以下の患者には慎重投与すること。
・高血圧患者
・糖尿病患者
・心臓疾患のある患者
・緑内障の患者(添付文書上では禁忌)
など。
いずれも、ミドリンPに配合されているフェニレフリンが影響することにより、症状を増悪させてしまうため、注意が必要です。
・ミドリンPは慎重投与の患者あり。
まとめ
今までの項目をまとめてみました。
ミドリンMとミドリンPの使い分け
・基本的には安全なミドリンMを使用
・眼底検査や術前など、より散瞳効果が必要な時はミドリンPを使用
・癒着を防止する際はミドリンPを使用
以上。ミドリンMとミドリンPの違いについてでした。
ではまた。