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ユリノーム、ユリス、ベネシッドの違いを解説!肝障害は?ユリスは安全な薬?

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今回のテーマは、尿酸排泄促進薬について。

主な尿酸排泄促進薬といえば、ユリノーム、ユリス、ベネシッドの3剤が挙げられます。

一体何が違うのでしょうか?

今回は、尿酸排泄促進薬であるユリノーム、ユリス、ベネシッドの違いや使い分けについて徹底解説していきます。

販売の歴史

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ベネシッドは1956年から販売している薬であり、3剤の中で一番古い薬です。現在では、尿酸を下げるために使用されることはほとんどありませんが、ペニシリン血中濃度を2〜4倍に増強する作用がある(相互作用により)ことから、梅毒の治療の際、ペニシリンと併用して使用されることがある薬です。

ベネシッド発売から20年の時を経て、ユリノームが発売されます。尿酸排泄促進薬として長く活躍したユリノームですが、2000年に緊急安全性情報で劇症肝炎が報告されたこと、さらには尿酸産生抑制薬の登場もあり、現在は処方が少なくなっています。

最後に、ユリスは2020年5月に発売した新薬となります。5月から1年間は14日制限となるため注意が必要です。

POINT!

・ベネシッドは、梅毒治療の際に使用されることがある。

・ユリスは、新薬で14日制限あり。(2021/5まで)

作用機序の違い 

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作用機序の違いとして、尿酸トランスポーターの選択性が異なります。

尿酸トランスポーターは、URAT1、ABCG2、OAT1、OAT3の4つが存在します。その中で尿酸の再吸収に関わっているのがURAT1、尿酸の分泌に関わっているがABCG2、OAT1、OAT3の3つとなります。

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ユリスは他の2剤と比較して、URAT1を選択的に阻害することで、尿酸の再吸収を抑制し、尿酸を排泄します。逆にユリノーム、ベネシッドの2剤は、URAT1以外の3つの尿酸トランスポーターも阻害してしまうため、尿酸の分泌(排泄)も抑制してしまうのです。

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理論上ユリスは他の2剤よりも尿酸排泄に特化している薬と言えるでしょう。

用法の違い

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3剤の中でユリスのみ用法が1日1回となっています。用法の面から考えると、ユリスが一番服用しやすいと言えるでしょう。

逆にベネシッドは、用法もさることながら、用量は2〜8錠を分2〜4で服用する必要があるため、比較的服用が面倒な薬です。(他の2剤は1回1錠を服用)

POINT!

・ユリスのみ1日1回なので、用法の面では一番服用しやすい。

規格・薬価の違い

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規格はユリノームが2つの規格、ユリスが3つの規格、ベネシッドは250mgの1規格のみの販売となります。

薬価を比較すると、ユリスは新薬なだけあり、薬価が一番高い薬となります。 

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1日用量に換算しても、3剤の中でユリスの値段が一番高いです。 

逆に3剤の中で一番安い薬は、ユリノームとなります。(1日用量で換算)

また、ユリノームには3剤の中で唯一、ジェネリックも存在するため、コスト面ではユリノームが一番使いやすいと言えるでしょう。

POINT!

・値段はユリスが一番高く、ユリノームが一番安い。

効果の違い

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尿酸を下げる強さを比較すると、ユリノームとユリスがほぼ同等と考えられます。(ベネシッドはデータがないため不明)

根拠として、ユリノームとユリスの2剤を最大用量で比較した結果、尿酸値6mg/dL以下達成率はほぼ同等であったという結果がユリスのインタビューフォームに記載されています。(ちなみに尿酸値の正常値は7mg/dL以下)

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作用機序を考慮すると、ユリノームよりもユリスの方が効果が高いだろうと考えていましたが、実際の比較データはほぼ同等とのことで、意外に残念な結果と感じます。

ちなみに、尿酸産生抑制薬であるフェブリクとユリスを比較した結果、尿酸値6mg/dL以下達成率はほぼ同等であったという結果もユリスのインタビューフォームには記載されています。

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POINT!

・強さはユリノーム=ユリス

副作用の違い

尿酸排泄促進薬の3剤は、比較的副作用が少なく、添付文書を見るかぎり、比較できるようなデータはありません。

また、ユリノームと言えば、劇症肝炎のイメージが強いですが、インタビューフォームを確認したところ、実はユリノームを服用して肝障害が起こる可能性は非常に低いようです。とはいえ、注意が必要なことは変わりありませんが。

劇症肝炎等の重篤な肝障害、黄疸があらわれることがあるので、定期的に肝機能検査を行うなど観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。[「警告」の項参照]なお、使用実態下における安全性および有効性に関する調査において、肝障害(重篤症例)の発現頻度は0.09%であった[4,659例中4例]。

引用元:ユリノーム錠 インタビューフォーム

禁忌の違い

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ベネシッドはごく稀に貧血症状(頻度不明)を起こすことがあることから、血液障害患者は禁忌となります。

また、尿酸排泄促進薬の特徴で結石ができやすいこと、さらには腎障害患者へ使用すると効果が減弱してしまうことがあるため、ユリノームとベネシッドは腎結石、高度の腎機能障害患者には禁忌となります。

その反面、新薬であるユリスには禁忌がありません。

一見ユリスは使いやすい薬に見えてしまいますが、実際はそうではないため、注意が必要です。

ユリノームとユリスの禁忌は同じと考えても過言ではない

肝障害について

ユリノーム服用で引き起こるとされる劇症肝炎の機序は、今のところはっきりとは解明されていません。ミトコンドリア毒性 or CYP2C9の阻害が有力説

ユリスは、ミトコンドリア毒性やCYP阻害がないよう設計されたとのことですが、要因がはっきりしていない以上、肝障害には注意が必要となります。

なにせユリノームの劇症肝炎が報告されたのは、ユリノームが販売を開始して、約20年後の話なのです。(緊急性安全情報により劇症肝炎が報告あり。ユリノームと因果関係が否定できない事例が8例報告)

副作用の項目でも記載したように、ユリノームも治験段階では、重篤な肝障害リスクは非常に低く(重篤な肝障害は4659例中4例で発現頻度は0.09%)、安全に使用できる薬と考えられていました。

よって、ユリスを服用の際も油断せずに肝機能を定期的にモニタリングする必要はあると考えます。実際にユリスの添付文書には「特定の背景を有する患者に関する注意」の項目に、肝障害患者に対して注意喚起が記載されています。

肝機能障害患者

慎重な経過観察を行うこと。他の尿酸排泄促進薬では重篤な肝障害が認められている。
なお、臨床試験では、重篤な肝疾患を有する患者、AST又はALT 100IU/L以上の患者は除外されている。

引用元:ユリス錠 添付文書

腎結石、高度の腎機能障害について

肝障害と同じく、ユリスの添付文書には「特定の背景を有する患者に関する注意」の項目に結石、腎障害患者に対して注意喚起が記載されています。

尿路結石を伴う患者

治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。本剤の薬理作用から、尿中尿酸排泄量の増大により、尿路結石の症状を悪化させるおそれがある。
なお、臨床試験では、尿路結石を伴う患者への投与は行われていない。

引用元:ユリス錠 添付文書

重度の腎機能障害患者(eGFRが30mL/min/1.73m2未満)

他剤での治療を考慮すること。本剤は腎近位尿細管において作用するため、腎機能障害の程度に応じて、有効性が減弱する可能性がある。特に、乏尿又は無尿の患者においては、有効性が期待できないことから、本剤の投与は避けること。
なお、臨床試験では、eGFRが30mL/min/1.73m
2未満の患者は除外されている。

引用元:ユリス錠 添付文書

むしろなぜ禁忌に載せないのかとても不思議なところです。

妊婦について

妊婦も同じく、ユリスの添付文書には注意喚起が記載してあります。

ちなみにベネシッドも妊婦に対しての安全性データは存在しないため、妊婦の場合はベネシッドというわけにはいきません。

妊婦

妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。動物実験(ラット及びウサギ)で、臨床曝露量の約1053倍及び約174倍に相当する用量で骨格変異が認められた。

引用元:ユリス錠 添付文書

POINT!

・ユリスの添付文書には、禁忌が記載されていないが、実際にはユリノームと同じく多くの注意が必要。

相互作用の違い

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ユリノームとユリスは相互作用が少なく、ベネシッドは相互作用が多い薬です。

冒頭でも記載したように、ベネシッドはペニシリン抗生物質との相互作用を利用して、梅毒治療の際に利用されることがあります。

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また、ユリノームは相互作用が少ないとはいえ、CYP2C9を阻害することにより、ワーファリンの効果を増強させてしまうため、注意が必要です。

その点、新薬であるユリスは、CYPを阻害しないため、ワーファリンとの併用も問題ありません。

POINT!

・ユリノームとユリスは相互作用が少なく、ベネシッドは相互作用が多い。

・ユリノームは相互作用が少ないが、ワーファリンとの併用は注意。

まとめ 

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最後に3剤の使い分けをまとめてみました。

尿酸排泄促進薬の使い分け

ユリノーム

値段は少しでも安い方が良い

他にも多くの薬を飲んでいる(ワーファリン服用時は注意)

ユリス

他にも多くの薬を飲んでいる(ワーファリンを服用してても問題なし)

ベネシッド

梅毒治療の際に使用する

以上。尿酸排泄促進薬の使い分けでした。

最新の高尿酸血症ガイドラインでは、病型分類にかぎらず治療薬を選択できると記載されています。そのため尿酸排泄促進薬ではなく、比較的服用しやすい尿酸産生抑制薬が現在の治療の主体となっています。

今後、ユリスの長期投与が解禁され、データが蓄積された時に、どこまで市場にくい込んでいけるかが見所です。

尿酸産生抑制薬の使い分けについては、こちらの記事で解説しています。

ではまた。