今回のテーマは、尿酸産生抑制薬について。
尿酸産生抑制薬には、ザイロリック、フェブリク、ウリアデック、トピロリックの4剤が存在します。
一体何が違うのでしょうか?
今回は、尿酸産生抑制薬であるザイロリック、フェブリク、ウリアデック、トピロリックの違いや使い分けについて徹底解説していきます。
販売の歴史
ザイロリックは2002年に発売された薬であり、4剤の中で一番古い薬です。
その後、フェブリク→ウリアデック、トピロリックの順に販売されていきます。
ここで1つ重要なポイントとして、ウリアデックとトピロリックの2剤は名前は異なるものの、有効成分が全く同じであるということです。
というのも、実はこの2剤はメーカーが異なるだけの併売品であるため、有効成分はもちろんのこと、添加物や薬の形状まで全く同じ薬なのです。(ウリアデックは三和化学、トピロリックは富士薬品)
・ウリアデックとトピロリックはメーカーが異なるだけの併売品。
用法の違い
比較すると、フェブリクのみ1日1回の服用でよいため、用法の面から考えると、フェブリクが一番服用しやすいと言えるでしょう。
ウリアデックとトピロリックはなぜ1日2回?
「販売の歴史」の項目でも記載したように、ウリアデックとトピロリックは比較的新しい薬であるにも関わらず、なぜか用法は1日2回という面倒な飲み方になっています。
この疑問に対して販売メーカーは、以下のように回答しました。
用法を1日2回に分けることで、尿酸値の日内変動を抑えることができるとわかったので、あえて1日2回にしている。(尿酸値の変動があると痛風発作を起こしやすくなる)
実際にトピロリックのインタビューフォームを確認すると、トピロリック1回80mgを1日1回で服用した時よりも、1回40mgを1日2回で服用した時の方が、尿酸値を下げる効果が強く、日内変動も少ないというデータが存在します。
しかし、他剤には尿酸値の日内変動データがありませんので、一概に他剤より優れているとは言えないでしょう。
・フェブリクのみ1日1回なので、用法の面では一番服用しやすい。
・ウリアデック、トピロリックは尿酸値の日内変動を抑えるため、あえて1日2回とのことだが、他剤より優れているかは不明。
規格・薬価の違い
ザイロリックは2つの規格があるのに対して、フェブリク・ウリアデック・トピロリックは3つの規格が存在します。
薬価を比較すると、一見フェブリクの薬価が高いように見えますが、1日用量の薬価に換算するとウリアデックの薬価が一番高いことがわかります。
ちなみにウリアデックとトピロリックは併売品ですが、ウリアデックの方が少しだけ薬価が高いようです。
逆にザイロリックは4剤の中で一番安い薬と言えるでしょう。
また、4剤の中で唯一ザイロリックのみジェネリックが存在している(2020/6現在)ということもポイントです。ジェネリックになると、さらに薬価が安くなります。
効果の違い
各薬剤のインタビューフォームを確認したところ、3剤の中で一番効果が強いのはフェブリクで、ザイロリックとウリアデック(トピロリック)の効果はほぼ同等、もしくはザイロリックの方が強いと考えられます。
根拠として、ザイロリックとフェブリクの2剤を最大用量で比較した結果、フェブリクの方が尿酸値6mg/dL以下達成率が高いという結果がフェブリクのインタビューフォームに記載されています。(ちなみに尿酸の正常値は7mg/dL以下)
さらにザイロリックとウリアデックの2剤を比較した結果、尿酸値6mg/dL以下達成率はほぼ同等という結果がウリアデックのインタビューフォームに記載されています。
しかし、ザイロリックはなぜか中間用量(200mg)での比較であり、最大用量で比較すればウリアデックよりもザイロリックの方が尿酸値6mg/dL以下達成率は高いという結果がでると考えられます。
・強さはフェブリク>ザイロリック≧ウリアデック、トピロリック。
副作用の違い
添付文書を見るかぎり、主な副作用を比較できるようなデータはありません。そもそも尿酸産生抑制薬の4剤は、比較的副作用が少ないことでも知られています。
しかし、1つだけ添付文書に気になるデータが載っているので、紹介します。
心血管疾患を有する患者には注意
海外で実施された試験ではありますが、心血管疾患を有する痛風患者に対して比較試験をおこなったところ、ザイロリックと比較してフェブリクの方が心血管死、全死亡ともに割合が高かったというデータがあります。
そのため、フェブリクのインタビューフォームには、心血管疾患の悪化や発現に注意して使用するよう記載されています。
心血管疾患を有する痛風患者を対象とした海外臨床試験において、アロプリノール群に比較してフェブキソスタット群で心血管死の発現割合が高かったとの報告がある。本剤を投与する場合には心血管疾患の増悪や新たな発現に注意すること
しかし、ウリアデック・トピロリックとの比較データは存在しないため、4剤の中でフェブリクが一番悪いとは言えないところです。
腎機能低下時の投与量の違い
比較するとザイロリックは腎機能の低下に応じて、用量を低下させる必要があるのに対して、他の3剤は腎機能低下時でも減量は必要なく、比較的安全に使用が可能なようです。(重度の腎障害の場合は注意が必要)
理由として、ザイロリックは腎臓のみから排泄されるのに対して、他の3剤は腎臓に加え、胆汁からも排泄されるためです。
しかし、ザイロリックも減量が推奨されているだけで、禁止ではありません。
というのも、ザイロリック含め尿酸産生抑制薬の使用は、CKD(慢性腎不全)の進展を抑制するというデータがあり、高尿酸血症を有するCKD患者に対して基本的には使用が推奨されています。(高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版を参照)
・ザイロリックのみ腎機能が低下している時は、減量が必要。しかし、禁止ではない。
相互作用の違い
比較すると、ザイロリック>ウリアデック、トピロリック>フェブリクの順で相互作用は少なくなります。
相互作用の面から考えると、フェブリクが一番使いやすいと言えるでしょう。
ザイロリック・ウリアデック・トピロリックの3剤はワーファリンやキサンチン系薬剤であるテオフィリンなど、比較的多くの患者が服用している薬と飲み合わせが悪いため、注意が必要となります。
また、添付文書を確認するとザイロリックのみ禁忌薬の記載がありませんが、メルカプトプリンやアザチオプリンとザイロリックを併用する際は、副作用が増強する可能性があるため、用量を1/3〜1/4に減らす必要がある(メルカプトプリン、アザチオプリンの用量を減らす)との記載があるため、他剤と同じように禁忌薬と言っても過言ではないでしょう。
・4剤の中でフェブリクは相互作用が一番少ない。
まとめ
最後に4剤の使い分けを簡単にまとめてみました。
尿酸産生抑制薬の使い分け
ザイロリック
・値段は少しでも安い方が良い(ジェネリックを推奨)
フェブリク
・とにかく尿酸値を下げたい
・腎機能が低下している患者
・他にも多くの薬を飲んでいる
ウリアデック、トピロリック
・腎機能が低下している患者
・心血管疾患を有する患者(ウリアデック、トピロリックのデータはなく、エビデンス低)
・痛風発作が多い患者(他剤との比較データはないため、エビデンス低)
以上。尿酸産生抑制薬の使い分けでした。
尿酸排泄促進薬の使い分けについては、こちらの記事で解説しています。
ではまた。