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ディフェリンゲル、ベピオゲル、デュアックゲルの違いを徹底解説!

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今回は、尋常性ざ瘡(ニキビ)治療薬の外用剤であるディフェリンゲル、ベピオゲル、デュアック配合ゲル(以下デュアックゲルと略)の違いについて徹底解説していきます。

有効成分の違い

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ディフェリンゲルの有効成分は、ビタミンA誘導体であるアダパレンゲル。

ベピオゲルの有効成分は、過酸化ベンゾイル(2.5%)です。

デュアックゲルは、過酸化ベンゾイル(3%)と抗生物質であるクリンダマイシン(商品名:ダラシンゲル)の2種類が含まれています。

ちなみに、ベピオゲルよりもデュアックゲルの方が高濃度の過酸化ベンゾイルが含まれています。

ニキビの適応の違い

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ニキビには4つの段階が存在し、一般的に白色→黒色→赤色→黄色の順で色が変化し、悪化していきます。 

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適応の違いとしては、ディフェリンゲルは白色、黒色のニキビにのみ効果があるのに対して、ベピオゲル、デュアックゲルは全てのニキビに効果があります。

特にデュアックゲルは、過酸化ベンゾイルの濃度も高く、抗生剤も含まれているため、重症例では一番有効です。しかし、抗生剤が含まれていることはデメリットにもなります。抗生剤が含まれていると耐性菌を考慮する必要があるため、重症例以外のケースでは使用を控える方が良いでしょう。

POINT!

・デュアックゲルは重症例では一番有効であるが、逆に重症例以外のケースでは耐性菌を考慮して使用を控える方がよい。

用法の違い

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用法は3剤とも同じで、1日1回です。デュアックゲルは、クリンダマイシンが含まれていますが、1日1回で良いというのが1つメリットとなります。(クリンダマイシンの用法は1日2回だが、デュアックゲルは1回の使用で同等の効果あり)

副作用の違い

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ディフェリンゲルは約8割の確率で副作用が発症したデータがあり、対してベピオゲルとデュアックゲルは3割〜4割ほどにとどまります。あくまでも添付文書のデータとはなりますが、症例数から見ても、ディフェリンゲルの方が副作用はでやすいと言えるでしょう。

しかし、ベピオゲルよりもデュアックゲルの方が濃度が高い過酸化ベンゾイルが含まれているにも関わらず、ベピオゲルの方が副作用頻度が高いのは不思議なところです。あくまでも添付文書のデータであるため、一概には比較できないということです。

また、頻度は高くないですが、ベピオゲルはアレルギー性皮膚疾患を副作用として起こす可能性があると言われており、発症した場合はディフェリンゲルよりも強い副作用症状がでてしまうため、注意が必要です。ということは、もちろんデュアックゲルでも注意が必要です。

POINT!

・ぺピオゲル、デュアックゲルは、比較的副作用の頻度は少ないが、稀に強いアレルギー性皮膚疾患を引き起こす可能性があるため注意が必要。

使用上の注意の違い

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ディフェリンゲルで一番注意が必要な事は、妊婦に対して使用すると催奇形性の可能性があるということです。しかし、あくまでも動物実験レベルの報告であり、人間での催奇形性報告は1件もありません。

また、海外の論文では、関連性は低いとの報告もあります。

参考文献:Minor malformations characteristic of the retinoic acid embryopathy and other birth outcomes in children of women exposed to topical tretinoin during early pregnancy. 

もちろん万一がありますので、注意するに越したことはありません!

対して、べピオゲルとデュアックゲルは、漂白作用があるため、洋服や髪に付着すれば色落ちの可能性があり、注意が必要です。個人的には、長髪の女性でカラーリングされている方には要指導と考えています。

POINT!

・ディフェリンゲルは催奇形性、ベビオゲルとデュアックゲルは漂白作用に注意。

保管方法の違い

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基本的にディフェリンゲルは室温保管。

ベピオゲル、デュアックゲルは冷蔵庫保管となります。

ベピオゲルの25℃以下というのは、微妙な温度設定です。室温とは1〜30℃と定められているため、冷蔵庫保管が基本となるでしょう。

しかし、ベピオゲルのインタビューフォームを確認すると、温度40℃ 湿度75%の条件で6ヶ月保管しても品質の変化は見られなかったと記載されています。

薬局保管の場合は年単位で保管することもあるため、冷蔵庫保管する必要がありますが、患者に渡す際などはそこまで過敏になる必要はないでしょう。

ちなみにデュアックゲルは、2〜8℃なので間違えなく冷蔵庫保管です。(デュアックゲルのインタビューフォームには、配合されているクリンダマイシンが温度30℃ 湿度65%の条件で2ヶ月保管すると、含量低下と記載あり)

POINT!

・ベピオゲルは添付文書上、冷所保存となっているが、一般家庭の室温で保管しても品質に変化はない。

包装の違い

f:id:huji7:20200505115916p:plainべピオゲルのみ大きい包装があるため、患者側にとってはメリットがあるでしょう。べピオゲルは元々15gチューブのみでしたが、2018年1月に30gチューブが追加となりました。

逆にデュアックゲルは10gチューブのみの一番小さい包装となります。しかし、デュアックゲルは抗生剤も含まれているため、長期の使用は考慮していないためでしょう。(長期使用は、耐性菌の問題があるため)

薬価の違い

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日本では、ディフェリンゲルが一番古くからあるため、薬価も一番安いようです。 しかし、1割負担、3割負担で考えれば、そこまで大きな差ではありません。

まとめ

今までの項目をまとめてみました。

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使い分けについて

軽症の場合(白色ニキビ〜黒色ニキビ)

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最初はディフェリンゲルの使用が良い(アレルギー性皮膚炎を考慮して)と考えます。

重症の場合(赤色ニキビ〜黄色ニキビ)

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アレルギー性皮膚炎を考慮する場合は、ディフェリンゲル+抗生剤(ディフェリンのみだと赤ニキビ以上に対応できないため抗生剤追加)。もしくはベピオゲル(耐性菌を考慮)で様子をみるのが良いと考えます。

症状がひどいようなら、最初からデュアックゲルの使用も考えられるでしょう。

以上、ディフェリンゲル、ベピオゲル、デュアックゲルの使い分けでした。

ではまた。