今回は、半消化態栄養剤であるイノラス、エンシュアH、エンシュアリキッド、エネーボ、ラコールの違いや特徴について解説していきたいと思います。
カロリー・主要成分の違い
1本あたりのカロリー・主要成分はエンシュアHとラコール液体(400mL包装)が他剤より多いことがわかります。
しかし、ここで注目したいのが、1本当たりの容量の違いです。
1本あたりの容量の違い
1本あたりの容量はイノラスが一番少ないということがわかります。
容量から、100mLあたりのカロリー・主要成分を計算すると以下になります。
100mLあたりで比較すると、イノラスはカロリー・主要成分が他剤より多く含まれていることがわかります。
つまり、イノラスは他剤と比較して効率良く摂取できる薬と言えるでしょう。
・1本あたりのカロリー、主要成分が多く含まれているのは、エンシュアHとラコール液体(400mL)だが、一番効率良く摂取できるのはイノラスである。
微量元素の違い
イノラス 、エネーボは他剤と比較すると微量元素もしっかり含まれています。
特にイノラスは、高齢者に必要とされるビタミンDも一番多く含まれているため、利用価値が高いと言えるでしょう。
逆にエンシュアは、微量元素が含まれていないため、長期で使用すれば、欠乏症が問題となります。
・イノラスは微量元素も含まれおり、ビタミンDも一番多く含まれている。
・エンシュアは微量元素が含まれていないため、欠乏症に注意が必要。
投与方法の違い
ラコール半固形タイプのみ経口投与が不可となります。
一見、デメリットに見えますが、ラコール半固形タイプは経管投与する場合において大きな力を発揮します。
経管投与時間の違い
上記のように、ラコール半固形タイプは他剤よりも経管投与する時間が大幅に短いというメリットが存在します。
・ラコール半固形タイプは、経管投与する時間が圧倒的に短い。
水分含量の違い
エンシュアリキッドやラコール液体タイプなど水分含量が多い薬は、脱水を防ぐことができます。
逆にイノラスなど水分含量が少ない薬は、水分量を制限している腎不全の患者などには有効に使用できます。
水分含量は、それぞれの薬でそこまで大きな差はありませんが、1つの使い分けとしておさえておくと良いでしょう。
粘度の違い
粘度が高いほど、経管チューブに詰まりやすくなる可能性があるため注意が必要です。
また、ラコール半固形タイプはとても粘度が高いため、加圧バッグなどの医療器具を必ず使用する必要があります。
・ラコール半固形>イノラス=エンシュアH>エネーボ>エンシュアリキッド>ラコール液体の順で経管チューブに詰まりやすい可能性。
浸透圧の違い
理論上は浸透圧が高いほど、下痢などの副作用がでやすくなります。
特にイノラスとエンシュアHは、浸透圧が比較的高いとされている消化態栄養剤のツインライン(470〜510)よりも高い数字となっているので注意が必要です。
しかし、これはあくまでも理論上の話。
添付文書で下痢の発生割合を比較すると以外な結果がわかりました。
下痢の発生割合の違い
浸透圧が一番高いはずのイノラスが下痢の発生割合が一番低く、浸透圧が低いとされるエネーボやラコール液体タイプは下痢の発生割合が高いという結果がでています。
実際のところ、どちらが正しいのかは不明です。
しかし私の経験でいえば、患者の個人差もあるのか、そこまで下痢の副作用に違いを感じたことはありません。
・下痢の発生割合は、浸透圧の違いだけで簡単に判断することはできない。
フレーバーの種類の違い
エンシュアH、ラコール液体(200mL)の2つは、フレーバーが多く存在するため、患者側からするとメリットと言えるでしょう。
しかし薬局側にとっては、在庫数が増えるため、デメリットにもなります。
もしエンシュアHを使用する患者さんから、「全てのフレーバーを試しに飲んでみたい!」などと言われた時には、大変なことになるでしょう!
【追記】
2020年8月イノラスにコーヒー味といちご味が追加されました。
薬価の違い
比較的新しい薬であるイノラスと特徴的な固形製剤であるラコール半固形タイプが他剤よりも少し値段が高いようです。
逆にカロリー・主要成分が比較的少ないエンシュアリキッドやラコール液体(200mL)は値段が安いです。
1本あたりでみると、わずかな差ではありますが、長期間に換算すると大きな差になってきます。
半消化態栄養剤の違い・まとめ
今までの項目をまとめてみました。
金額やフレーバーを考慮しないのなら、経口投与の場合はイノラスを選択するのが一番無難と思われます。
経管投与の場合は、経管投与時間が大きな問題となってきますので、ラコール半固形タイプが使用されることも多いでしょう。
こんな記事も書いていますので、よろしければどうぞ。
少しでも日常業務の手助けになれば幸いです。
ではまた。