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SGLT2阻害薬の違いとは?7薬品を徹底比較し、使い分けまで解説するよ!【完全版】

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今回のテーマは、糖尿病

その中でもピックアップしたいのが、

SGLT2阻害薬です。

SGLT2阻害薬は、低血糖リスクが少ない上に、血圧低下体重減少

さらには心不全リスクの低下腎臓の保護効果があることもわかってきており、注目の薬剤と言っても過言ではないでしょう!

しかし!

現在、SGLT2阻害薬は6成分、7種類もの薬が存在します。

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一体何が違うのでしょうか!?

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今回は様々な文献データをまとめ、

6成分7薬品のSGLT2阻害薬の違いについて解説していきたいと思います。

違いを見ていく前に、基本情報を再確認しておきます!

SGLT2阻害薬とは?

腎臓の近位尿細管に存在するSGLT2を阻害することで、

糖の再吸収を抑制し尿糖排泄を促進します。

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※イラストは、ジャディアンスの製品情報紙を参照

つまり、SGLT2を阻害することで、糖を体外に排出することができる!

ということ。

注意すべき副作用は?

脱水

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糖を体外へ排出する過程で利尿効果が働きます。

その結果、脱水に注意が必要です。SGLT2阻害薬を服用中は、1日で500mLぐらいの水を摂取するよう指導するのはこのためです。

しかし、最近の研究結果では、尿量の上昇は一過性(服用後、5日間ぐらい)で、水分摂取はそれほど重要ではないことがわかってきています。

尿路感染症、性器感染症

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糖を体外へ排出するということは、必然的に尿糖が増えます。尿糖により細菌が増殖し、尿路感染症、性器感染症を発症してしまう可能性があります。

皮膚障害

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皮膚障害が起こる原因は未だ解明されていません。海外ではほとんど見られず、日本人に多く見られることがわかっています。いずれにせよ、皮膚障害がでればすぐに中止し、SGLT2阻害薬以外の治療薬に切り替える方が無難でしょう。

皮膚障害に関しては、原因が解明されれば追記します。

それでは早速、違いを見ていきましょう!

規格の違い

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規格の面から考えるとジャディアンス、ルセフィ、フォシーガ、スーグラの4剤は患者の状態により用量調節できるため、比較的使いやすいと言えるでしょう。

薬価の違い

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※上記は2020年2月の薬価を基に作成

薬価はどの薬も似たようなものです。

強いて言えば、スーグラが少し安いと言えるでしょう。

また、アプルウェイとデベルザは同じ主要成分(トホグリフロジン)であり効果も同じはず(添加物も全く同じで異なるのは薬の印字のみ)ですが、アプルウェイの方が薬価が高いようです。微々たる差ではありますが、これだけでアルプウェイを使用するメリットはないと言っても過言ではないでしょう。

服用用法の違い

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SGLT2阻害薬は、服用方法が同じです。(フォシーガ以外)

1日1回 朝食前 or 朝食後。

(※フォシーガは、1日1回で服用タイミングに指定はなし)

なぜ朝なのか?

副作用の項目でも記載したように、SGLT2阻害薬は利尿効果があるため、朝以外に服用すれば夜間頻尿の原因になることがあります。フォシーガは、メーカーからの指定はありませんが、朝の服用が無難でしょう。

なぜ朝食前or朝食後なのか?

不思議な服用方法ですよね?

食前と食後だったら用法が結構異なるので、

どちらかはっきりしてほしい!

そもそも朝食前と朝食後で効果に差はないのでしょうか?

答えはインタビューフォームにありました!

海外で実施した食事の影響試験において,本剤 25mg の空腹時投与に比べて 食後投与の AUC0-∞,Cmax が低下することが認められているが,血糖降下作用に及ぼす影響は小さいと想定されることから,食前投与に規定する必要はないと判断された。

引用元:ジャディアンス・インタビューフォーム

つまりは、朝食前が一番良いけれど、効果も変わらないと思われるので、服用しやすさの観点から食後投与が追加になったということでしょう。 

適用の違い

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フォシーガとスーグラの2剤は、第3相臨床試験において、有益性と安全性が評価されたため、1型糖尿病の適応が追加となりました。

特に有名なのがフォシーガのDEPICT試験で、インスリン治療中の1型糖尿病患者に対してフォシーガ錠投与群でプラセボ群と比較してHbA1c値の改善、総インスリン投与量の減少、体重減少を認めました。

また、糖尿病治療経口薬の中で1型糖尿病の保険適応があるのは、αグルコシダーゼ阻害薬とフォシーガ、スーグラだけです。

SGLT2阻害薬の中でフォシーガとスーグラの2剤は、インスリンだけではコントロールできない症例の時に非常に有効活用できると言えるでしょう。

SGLT2の選択性の違い

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上記は、SGLT1に対してSGLT2の選択性が何倍高いのかを比較したデータです。

つまり、数字が大きい薬ほどSGLT2の選択性が高いということ。

数字に幅があるのは、試験データにより結果が少し変わってくるためです。

※上記比較データは、各SGLT2阻害薬のインタビューフォームとSuzuki M, et al.: J Pharmacol Exp Ther. 2012; 341: 692-701から作成 

ここで一番重要なのが、

「SGLT2の選択性が高い薬=強い薬」と一概には言えない!

ということです。

一体どういうことなのか?

これを理解するためには、SGLT1とSGLT2の違いを知っておく必要があります。

詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照して下さい。

www.yakupedia.com

(とても長くなるので別記事で作成しました)

この記事では、結論だけ記載します!

SGLT1、SGLT2の選択性・まとめ

SGLT1の選択性も高い薬 スーグラ 、カナグル

食後血糖を下げる効果が高いため、比較的血糖値を下げる効果が強い可能性。

しかし、長期使用では腎臓以外への副作用(下痢、虚血性心疾患、骨格筋への影響など)に注意が必要。ただ、スーグラ 、カナグルもSGLT2阻害がメインであるため、食後血糖を下げる効果はあくまでも補助効果

SGLT2選択性が高い薬 ジャディアンス、アプルウェイ、デベルザ、ルセフィ、フォシーガ

余計な副作用は心配せず使いやすい。

半減期の違い

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半減期の違いで特徴的なのが、アプルウェイとデベルザの2剤です。

アプルウェイ、デベルザの主要成分は同じトホグリフロジンです。

トホグリフロジンは半減期が短いため、脱水から生じる夜間頻尿例には有効使用できると推測されます。

トホグリフロジン20 mgを朝1回投与することで,日中の尿量は増加するものの,夜間の尿量増加はわずかにとどまり,服用患者の夜間就寝中のQOLを損なうことは少ないことが示唆された。トホグリフロジンは SGLT2 阻害薬のなかでは半減期が5.4時間と最も短く,健康成人に対する朝1回単回投与試験でも,夜間の尿糖排泄は少ないことが示されている。本試験において,日中に比べ,夜間の尿量増加が少なかったことは,トホグリフロジンの半減期が短いことによると推察される。

引用元:診療と新薬2017;54:25-28 SGLT2阻害薬投与前後の血糖ならびに尿量変化について」

この理論に基づけば、逆にジャディアンスとスーグラの2剤は比較的半減期が長いため、夜間頻尿が起こりやすいと言えるでしょう。 

代謝の違い

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代謝には、下記の2つのパターンがあり、どちらで代謝されるかを把握しておくことは以外と重要なことです。

① CYP代謝

CYPとは、ほとんど全ての生き物に存在する酸化酵素です。

CYPで代謝される薬は多く、薬を併用することで代謝が拮抗

・薬の効果が上がる

・副作用がでやすくなる

という可能性がでてきます。

また、CYPを誘導や阻害する薬も多く存在するため、CYPで代謝される薬物は注意が必要となります。

② グルクロン酸抱合

グルクロン酸抱合は、UGT(グルクロニルトランスフェラーゼ)という酵素の働きにより、文字通りグルクロン酸が薬物にくっつくことで、代謝されます。

グルクロン酸抱合で代謝される薬物は、CYPで代謝される薬物より少ないため、代謝が拮抗する可能性が低いです。さらにUGTを阻害、誘導する薬物もCYPよりも少ないでしょう。(あくまでも少ないというだけ!)

つまり!

両者の違いを一言で説明するなら、

グルクロン酸抱合で代謝される薬物の方が相互作用が少ないです。

つまり、相互作用の面から考えるとジャディアンス、フォシーガ、スーグラ 、カナグルの4剤が使いやすいSGLT2阻害薬であると言えるでしょう。

心血管イベント抑制のエビデンスの違い

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SGLT2阻害薬が一躍注目を浴びたのが、心血管イベント抑制の効果です。

SGLT2阻害薬の中でジャディアンス、フォシーガ、カナグルの3剤がエビデンスの頂点ともいわれる大規模臨床試験をおこない、心不全リスクを減らすという結果が示されました。

この結果に伴い、急性・慢性心不全ガイドライン(2017)では、心血管病既往歴のある2型糖尿病患者に対してジャディアンスとカナグル2剤の使用が推奨クラスⅠ(最高評価)と記載されています。※フォシーガの大規模臨床試験は2017年以降におこなわれたため、ガイドラインには記載がない

しかし3剤の大規模臨床試験を比較すると、全て同じデータがでているわけではないのがわかります。

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※3-point MACEとは、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の3つのこと

なぜ3つの大規模臨床試験で差がでてしまったのか?

DECLARE-TIMI58CAVANS PROGRAMは一次予防の患者も多く含まれていたため、統計的に有意差がでなかったのでは?」という説が有力ですが、完全には解明されていません。※EMPA-REG OUTCOMEは、二次予防の患者のみが対象

また、これはあくまでも私の仮説ですが

SGLT2への選択性の違いから生じている可能性もあるのではないでしょうか?

大規模臨床試験の補足情報

今後、ジャディアンス、フォシーガ、カナグルの3剤以外のSGLT2阻害薬で大規模臨床試験がおこなわれる可能性はほぼないそうです。理由は、3剤だけが世界中で販売されており、他の4剤は日本のみでしか販売されていないためです。

腎保護のエビデンスの違い 

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SGLT2阻害薬の大きな補助効果としてもう1つ注目されているのが、

腎臓病の進行抑制効果です。

カナグルで大規模臨床試験(CREDENCE試験)がおこなわれ、腎臓の保護効果がある(腎イベントのリスクをプラセボと比較して30%低下と示されています。

また、ジャディアンス(EMPA-KIDNEY試験)とフォシーガ(DAPA-CKD試験)は現在試験中とのことで、結果が出次第追記します。

※副次評価項目では、ジャディアンス(EMPA-REG OUTCOME)とフォシーガ(DECLARE-TIMI58)も腎イベントのリスク軽減という結果がでている

まとめ 

今までの項目をまとめてみました。

青色:良い 黄色:良くも悪くもない 赤色:悪い

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SGLT2阻害薬の使い分け

 副作用なく使いたい

ジャディアンスフォシーガ (肝代謝、心血管イベントのエビデンスも考慮)

若い患者で背景疾患がなく、とにかく血糖値を下げたい

カナグル 半減期、心血管・腎保護のエビデンスも考慮)

夜間頻尿が気になる

アプルウェイデベルザ

というような感じでしょうか。

ちなみにSGLT2阻害薬の中で、一番売れている薬はジャディアンスです。

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ジャディアンスが売れている理由は、メーカーのプロモーションが上手なだけでなく、薬の性能自体が他薬よりも優れているところが多いからとも言えるでしょう。

新しい情報が出次第追記します。

ではまた。